例を挙げると、ロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナ国内の病院や医療従事者、その他の医療インフラに対する攻撃は700件以上にのぼる。こうした攻撃で218の病院や診療所が損壊した。多数の薬局や献血センター、歯科診療所も同様だ。
多国籍の法律専門家で構成されるMobile Justice Team(モバイル・ジャスティス・チーム)が3月2日に公表した発表によれば、ロシアの「特別軍事作戦」が民間インフラを標的とするだけでなく、ウクライナの文化的なアイデンティティを排除することを意図した組織的な行為であるとしている。モバイル・ジャスティス・チームは、ウクライナでの人道に対する犯罪を調査する組織で、チームは国籍の異なる25人の検察官や調査官、10人のウクライナ人の弁護士で構成されている。
文書や証言からは、最近解放されたウクライナ南部ヘルソンにある拷問室が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やロシア国家、連邦保安庁(FSB)などの情報機関と直接結びついていることが浮かび上がる。モバイル・ジャスティス・チームを率いる英国人弁護士で人権などに特化した非営利団体Global Rights Compliance(グローバル・ライツ・コンプライアンス)のマネージングパートナーであるウェイン・ジョルダッシュによると「大量虐殺の作戦はウクライナのアイデンティティを抹消させるというプーチンの計算された計画に組み込まれている」ことが証拠で示されている。不法な拘束から殺人まで、実行された犯罪はいわゆる特別軍事作戦に不可欠なものだった。事実上、その目的はロシアの支配下にある地域でウクライナ人を奴隷にすることだったのだ。
ヘルソンで集められた新たな証拠は、一連の拷問室がロシアという国によって計画され、直接資金が注がれたことを示している。調査官はヘルソンで20カ所もの拷問室を確認しており、その数は今後さらに増えると予想されている。これまでに拷問を生き延びた1000人以上が調査官に証言しているが、その一方で400人以上が「失踪」したことが記録されている。失踪した人々が殺されたのか、あるいはロシア領に連行されたのかは不明だ。
ヘルソンで拷問室に入れられた人々が受けた犯罪行為には電気ショックによる拷問や水責め尋問などがある。