政治

2023.07.10 09:00

バイデノミクスは「アベノミクスを反面教師」にせよ

2014年9月に国連総会に合わせ米ニューヨークで会談した安倍晋三首相(右)とジョー・バイデン米副大統領(当時)=ゲッティ

こうした政策はトランプの中国政策と正反対の関係にある。トランプは大規模な関税と激烈な「口撃」で中国を屈させようとした。米国企業のイノベーション拡大や生産性向上を促し、それを通じて中国に対抗しようという意欲は乏しかった。わかりやすい例を1つ挙げれば、トランプは自動車の排ガス規制を緩めた。その結果、デトロイトの自動車産業は、トヨタ自動車やフォルクスワーゲンといった世界大手との戦いで分が悪くなってしまった。
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対してバイデンは中国の「急所」に的確に狙いを定め、中国企業が重要なテクノロジーを入手するのを難しくしている。さらに重要なのは、バイデンのチームは、中国と競い合っていくために、米国自体がもっと努力しようという姿勢である点だ。トランプのように、たんに相手をゴール手前でつまずかせようとしているのとは違う。

あらためて言っておこう。バイデノミクスは日本の轍を踏んではならない。偶然だろうが、バイデノミクスもアベノミクスと同様に3本柱で構成されている。アベノミクスでは、大胆な金融政策、機動的な財政政、成長戦略という「3本の矢」が一斉に放たれることになっていた。日本は1本目は放ったが、残り2本はほとんどえびらに収まったままだった。

バイデノミクスの3本柱は、産業への公共投資、労働者の教育とエンパワーメント、そして独占的な行動の規制による競争促進となっている。
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もちろん、トップダウンではなくボトムアップで経済を強化すると約束することと、それに成功するかどうかは別々の問題だ。大事なのは、安倍のように中銀の低金利政策に頼ってその場しのぎを続けるのではなく、約束したことを着実に実行していくことだ。

バイデンの政策は成功するだろうか。その答えは時のみぞ知る。日本は過去10年、スローガンばかりで大胆な行動に踏み出さず、時間を浪費した。バイデンの経済チームはそれを反面教師にしなくてはならない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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