働き方

2023.07.11 09:00

大きなアイディアを実現させる創造の源「ソース原理」とは何か

『すべては1人から始まる―ビ ッグアイデアに向かって人と組織 が動き出す「ソース原理」の力』の著者 トム・ニクソン

『すべては1人から始まる―ビ ッグアイデアに向かって人と組織 が動き出す「ソース原理」の力』の著者 トム・ニクソン

トップダウンでもボトムアップでもない、新しい時代に合った働き方とは──。次世代型の組織づくりについて探究し、実践に迫った本が話題を呼んでいる。

「『ソース(創造の源)は誰か?』に目を向ければ チームが息を吹き返す」──昨年10月に翻訳・出版された本『すべては1人から始まる─ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』(英治出版)の帯に書かれた一文を見ると、手に取りたくなる人もいるのではないだろうか。

同書は、イギリス在住の起業家であり、コーチ、アドバイザー、アクティビストであるトム・ニクソンによって書かれた、新しい時代のビジネスや組織の在り方について模索した本だ(原題は『Work With Source』)。個人が内面深くから生み出したいと感じている活動に焦点を当て、それをいかにして複数の人のコラボレーションで実現していくのか、具体的な考え方と実践についても詳しく踏み込んでいる。日本でも話題となった『ティール組織』著者のフレデリック・ラルーも、この「ソース原理」に注目し、次世代の参加型組織を築くために極めて有効であると言及しているという。

今回、Forbes JAPANは、なぜいま、ビッグアイデアを実現するために「ソース(創造の源)」の考え方が求められているのか、邦訳版の監修も務めた山田裕嗣とともに語ってもらった。

山田裕嗣(以下、山田):邦訳版が出版され、日本の若い経営層を中心に反響が多く集まっています。興味深いことに、その中には「新たな理論に出合った」というよりも「思っていたことを言葉にしてくれた」という反応も見られます。まず初めに、ソース原理について簡単にトムから紹介してもらえますか?

トム・ニクソン(以下、ニクソン):すべての人は創造的であり、アイデアをもち、それを世の中で実現することができます。その創造的な活動をする人を「ソース」、<創造の源>と呼びます。

これは、スイス在住のコンサルタント、アドバイザーであり思想家であるピーター・カーニックが500人以上の経営者との対話を重ねる中でたどり着いた考え方で、誰かがその活動の「ソースである」ということは、それを世に出すための責任を引き受けている、ということになります。ソースは、世界が求めていることに耳を澄まし、アイデアを実現するために一歩足を踏み出した人です。

しかし、物事が大きくなり始めると、ひとりの力 だけでは実現不可能で、数十、数百、数千人とともに働くことが必要になります。そのときに目を向けるべきなのは「クリエイティブ・フィールド」、<創造の場>です。これは、アイデアの実現に必要な協力者やリソースを引き寄せる重力場のような役割と、協力者たちが集う物理的な空間としての二種類の性質をもちます。「ソース」「クリエイティブ・フィールド」、組織におけるこのふたつの存在をはっきりと認識することで、新しい組織づくりや働き方に踏み出すことができるようになるのです。

※ソース(Source)
アイデアを具現化するために、自分をさらけ出してリスクを負いながら最初の一歩を踏み出した(=イニシアチブを立ち上げた)人物。そのビジョンの領域を「全体ソース」とも呼ぶ。「サブソース」とは、特定の領域のイニシアチブの責任を引き受ける人物。しかし、クリエイティブ・フィールド全体の領域と一貫性を保ち、全体のビジョンを明確にするのは「ソース」の役割。

※クリエイティブ・フィールド(Creative Field)
ビジョンを実現するために必要な人やリソースを引き寄せ、活動全体に一貫性をもたせる場のこと。ソースがイニシアチブを立ち上げたときに生まれる。
トム・ニクソン◎イギリス、ブライトン在住の起業家、アドバイザー、アクティビスト。多数の起業経験を持つ。現在は創業者や企業に対してコーチングをおこない、21世紀型のビジネスや組織のあり方を模索する「Meaning Conference」のディレクターも務めるほか、ソース原理に則ってイニシアチブを可視化するツール「Maptio」を開発、展開。

トム・ニクソン◎イギリス、ブライトン在住の起業家、アドバイザー、アクティビスト。多数の起業経験を持つ。現在は創業者や企業に対してコーチングをおこない、21世紀型のビジネスや組織のあり方を模索する「Meaning Conference」のディレクターも務めるほか、ソース原理に則ってイニシアチブを可視化するツール「Maptio」を開発、展開。

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構成=荒川未緒、岩坪文子 写真=グレッグ・フンネル イラストレーション=山崎正夫

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