クリエイティブ・フィールドの存在に気づくと、この「会社」や「組織」という幻想から解放されます。ある活動において、何かがうまくいっていないと感じるとき、実はその根底にあるクリエイティブ・フィールドでソースにかかわる何らかの問題が起きており、そこに対処することで、メンバーのモチベーションを保ちながら問題を解決することができるのです。
私自身がソース原理と出合うきっかけとなったのは、2000年に起業した会社でのトラブルです。事業が軌道に乗ったあと、私は新しい活動に取り組むために株式の大半を売却し会社を去ったのですが、その二年半後、思いがけず経営危機に陥っていました。その会社で起きていた問題を理解する鍵となったのがソース原理です。当時、ソース原理について友人に紹介してもらったことで、従来の考え方を超えたより包括的な視点で人と組織をとらえることができました。
山田:トムは、この著書をどのような意図で書いたのですか。
ニクソン:私にとって、すべての始まりは「クリエイティビティ」です。ただし、壁に絵を描いたり色を選んだりすることではなく、「いかに世界が本当に求 めている新しいことを世に生み出すのか」「私たちすべての生活に影響するような大きなシステムをいかに変えるか」といったより大きな意味合いです。私たちが生きているのは、かつてないほど大きな変化の時代です。数百年前から発展してきたシステムや制度の多くが、前例のない変化に直面し、苦労しています。
人々が創造的になり、この時代に世界は何を必要としているのかを考えることが、これほど重要な時期はないと考えています。ソース原理によって個人主義・集団主義の二項対立を打ち破り、ボトムアップのよさもトップダウンのよさもどちらも取り入れることができます。これからの時代は、いままでにない様々な創造的なアイデアを実現することが求められます。この本は、そんな「ビッグアイデア」に取り組む人たちのために書きました。
山田:私自身も多くの会社の組織や経営に携わってきましたが、ソース原理に感銘を受ける経営者の中には、ボトムアップの経営に行き詰まりを感じている人も少なくありません。典型的なパターンの一つは、新しい組織の在り方としてフラットな組織を目指した結果、ただ対話を続けるだけで何の決定も下せなくなってしまうことです。もともとは創業者自身がソースとして必要に応じてトップダウンに振る舞うことで、組織全体にも創造的な活動が起きていたのに、過度にボトムアップな進め方を取ろうとすることで組織の活力も失われてしまうのです。
※フィールド・マップ(Field Map)
特定のクリエイティブ・フィールドにおける階層構造を、大小の入れ子状の円を用いて視覚化したマップ。一番外側の円はソースが抱く全体のビジョンを示す。このなかにサブイニシアチブをマッピングし、その位置関係や、誰がサブソースかを明確にすることがポイントになる。