働き方

2023.07.11 09:00

大きなアイディアを実現させる創造の源「ソース原理」とは何か

『すべては1人から始まる―ビ ッグアイデアに向かって人と組織 が動き出す「ソース原理」の力』の著者 トム・ニクソン

ニクソン:近年のリーダーシップについて書かれた本では、一般的にトップダウンではなくボトムアップが推奨される傾向にあります。ただ、実際に経営者がソース役を担う場合にはその両方が必要です。
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トップダウンが古くて悪い、ボトムアップが現代的でよい、ということではありません。本当に物事をまとめるときには独裁者になることさえ必要かもしれませんし、一方、ほかのメンバーが新しい取り組みを始めたり、責任を負ったりできるようなスペースをつくるときには、彼らに仕事を委ねるボトムアップが適していることが多い。ソース原理ではトップダウンとボトムアップ、2つの利点を活かすことができるのです。

注意しなければならないのは、ソースは決して最初から全てを知っているのではない、ということです。むしろ、大半の時間は「迷い」の中にいます。トップダウンに振る舞うときには、決して自分のエゴに基づく判断ではなく、イニシアチブにとって本当に大切なことだと確信を持てているか、丁寧に自分自身に問い掛ける必要があります。

ソースはひとりしか存在しない

山田:共同創業者のなかには、どちらがソースで、どちらがサブソースかが明確ではない場合もあります。協力関係がうまくいっている場合、あえて明確にする必要はありますか?

ニクソン:本にも書きましたが、私は以前、パーパス志向の再生可能エネルギー企業の創業者兄弟のコーチをしたことがあります。彼らの創業物語は強力で、ふたりでビジョンを練り上げており、共同のソースとしての役割を解体することはとても居心地が悪そうでした。しかし、私からすればふたりの役割の違いは明らかで、ひとりは自分をさらけだし個人的な使命感に駆り立てられた創造的なソースで、もうひとりは実務的な能力に長けた、ビジョンを実現する活動の大部分に責任を負う優秀なリーダー、サブソースでした。当時協力関係はうまく機能していたので私は彼らに「こういう考え方がある」という種をまいて展開を見守りました。
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3年後、ふたりの関係に転機が訪れました。サブソースである兄弟のひとりが仕事に疲れ、組織を去ることを検討していたのです。彼はオペレーションを同僚たちに譲り渡して新たなプロジェクトに歩み出し、もうひとりはより強くソースの役割を認識することができました。彼らは役割を深く認識することで、より真実に近いかたちで兄弟の新しいストーリーを描くことができました。

価値観やつながりを軸に後継者を探す

山田:著書のなかではソースの継承、つまり後継者へと引き継ぐことについても述べています。私が日本の経営者の方とお話していても、ここはたくさんの反響をもらいます。創業経営者の場合、「どうやって後継者を見つけるのかが難しい」とよく言われます。2代目、3代目として事業承継した経営者ならば、創業者が作られた思いや家業の資産を継ぎながら、その上でご自身のクリエイティビティをいかに発揮するのかに悩むケースも少なくないようです。
山田裕嗣◎令三社代表取締役。組織の人材開発・組織開発を行う株式会社セルムで人材育成・組織開発のプロジェクトに携わったのち、サイカの代表取締役COO、ABEJAの人事責任者などを務める。2018年には次世代の組織のあり方を探求するコミュニティとして一般社団法人自然経営研究会を設立。2021年に令三社を共同創業。

山田裕嗣◎令三社代表取締役。組織の人材開発・組織開発を行う株式会社セルムで人材育成・組織開発のプロジェクトに携わったのち、サイカの代表取締役COO、ABEJAの人事責任者などを務める。2018年には次世代の組織のあり方を探求するコミュニティとして一般社団法人自然経営研究会を設立。2021年に令三社を共同創業。

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構成=荒川未緒、岩坪文子 写真=グレッグ・フンネル イラストレーション=山崎正夫

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