トップダウンが古くて悪い、ボトムアップが現代的でよい、ということではありません。本当に物事をまとめるときには独裁者になることさえ必要かもしれませんし、一方、ほかのメンバーが新しい取り組みを始めたり、責任を負ったりできるようなスペースをつくるときには、彼らに仕事を委ねるボトムアップが適していることが多い。ソース原理ではトップダウンとボトムアップ、2つの利点を活かすことができるのです。
注意しなければならないのは、ソースは決して最初から全てを知っているのではない、ということです。むしろ、大半の時間は「迷い」の中にいます。トップダウンに振る舞うときには、決して自分のエゴに基づく判断ではなく、イニシアチブにとって本当に大切なことだと確信を持てているか、丁寧に自分自身に問い掛ける必要があります。
ソースはひとりしか存在しない
山田:共同創業者のなかには、どちらがソースで、どちらがサブソースかが明確ではない場合もあります。協力関係がうまくいっている場合、あえて明確にする必要はありますか?ニクソン:本にも書きましたが、私は以前、パーパス志向の再生可能エネルギー企業の創業者兄弟のコーチをしたことがあります。彼らの創業物語は強力で、ふたりでビジョンを練り上げており、共同のソースとしての役割を解体することはとても居心地が悪そうでした。しかし、私からすればふたりの役割の違いは明らかで、ひとりは自分をさらけだし個人的な使命感に駆り立てられた創造的なソースで、もうひとりは実務的な能力に長けた、ビジョンを実現する活動の大部分に責任を負う優秀なリーダー、サブソースでした。当時協力関係はうまく機能していたので私は彼らに「こういう考え方がある」という種をまいて展開を見守りました。
3年後、ふたりの関係に転機が訪れました。サブソースである兄弟のひとりが仕事に疲れ、組織を去ることを検討していたのです。彼はオペレーションを同僚たちに譲り渡して新たなプロジェクトに歩み出し、もうひとりはより強くソースの役割を認識することができました。彼らは役割を深く認識することで、より真実に近いかたちで兄弟の新しいストーリーを描くことができました。