影響を与えることは難しくない その積み重ねで世界も変えられる

イラスト=Yi Pan/I & CO

「1年のうちに、自分が周りの10人にいい影響を与えられたとして、その10人が翌年、それぞれ別の10人にいい影響を与えたとします。それを毎年繰り返していくと仮定して、50年後を想像すると、いい影響を受けた人の数は一体何人になっているでしょうか」

これは、テキサス大学オースティン校の卒業式で、米海軍幹部のウィリアム・マックレイヴン氏が卒業生に贈ったスピーチの内容だ。

彼は8000人の卒業生に向けてこう続けた。

「ここにいる8000人が、10人の人生をいい方向に変えたとします。その10人が他の10人の人生を変え、その10人がまた他の10人に、となれば、5世代で約8億人の人生を変えることになります。我々の大学のスローガンにあるように、ここから始まることで、世界を変えることができます」


マックレイヴン氏はテキサス大学出身で、軍人としてキャリアを積み、イラク戦争などに従軍した。

「イラクの首都バグダッドでは、右ではなく左の道に進むことを選んだおかげで、10人の兵士が命拾いをしました。アフガニスタンのカンダハールでは、女性下士官が歩兵小隊を簡易爆弾から遠ざけたおかげで、結果的に12人の兵士の命が助かりました。世界を変えることは、世界中のどこでも起きうること、また誰にでも可能なことです」

人に影響を与えることを難しく考えすぎる必要はない。世界はすぐには変えられないが、半世紀後には変わっているかもしれないのだ。



ここからは、僕自身の経験を紹介したい。

一人の青年の人生に影響を与えた「Future Lions」

僕が30代になりたてのころ、世界最大広告賞のであるカンヌ・ライオンズ(Cannes Lions International Festival of Creativity)に出席をする機会があった。その後毎年出席することになるのだが、それまでカンヌ・ライオンズは一流のクリエイターを対象としており、実績のない若手にはチャレンジできる機会が少なかった。

そこで僕は、応募資格を学生に限定した「Future Lions」という新しい賞を創設し、世界の一流に若い人たちを知ってもらおうと考えたのだ。

「Future Lions」ではただ広告を考えてもらうのではなく、「5年前には不可能だったアイデアを考えて下さい」という課題を出す。それは15年以上経った今でも同じ形で続いている。
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文=レイ・イナモト

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