アート

2023.07.04 11:30

井田幸昌が鳥取に凱旋。「変わり続けるもの」と「変わらないもの」とは

巡回展「Panta Rhei/パンタ・レイ−世界が存在する限り−」は、7月22日〜8月27日に米子市美術館で、9月30日〜12月3日に京都市京セラ美術館で開催される

「100年前と今では文明が全然違う。だから作家がやることも違います。だからといって過去の作家が今の作家に劣っているということはありません。新しい文明の利器が出てきたからといってそれを使うべきだとは思わないけど、使う人もいる、ということですね。
advertisement

例えば、自分より若い世代は、AIにももっとリアリティを持って接するようになると思います。そうなったとき、AIを活用する作家が増えているのではないでしょうか。カメラやビデオといった技術が誕生したときと同じです。人間という生物の根幹は何千年も前からそれほど変わっていないので、使う技術は何でもかまわないと思います」

アートに触れられる「機会」をつくる

井田は画家としての評価が高まるにつれ、支えられる側から「支える側」となり、新たな意識も強くするようになった。

海外と日本のアート市場の違いを感じてきたことも、その変化に影響を与えている。日本でも、多くの人がアートに触れられる機会を増やしたいと考えている。

「例えば、神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴り止まないっ』という有名な曲に、ビートルズやセックスピストルズを聴いて衝撃を受ける、という歌詞がありますよね。そういう、それまで知らなかった美しいものに触れて、そこで感動した経験が人生を豊かにする。人生が充実するような気づきが得られるような機会をつくりたいんです」
advertisement

日本ではやや閉じられた世界になってしまっているアートを、オープンでアクセスしやすいものにしたい。その実現は、誰もが生きやすい世の中をつくることにもつながるのではないかと考えている。
 

「人任せにしても仕方がないので、僕が発信して世界を変えられるように頑張らないと、と思うようになりました」

かつて父とロバートが自分に創作の機会を与えてくれたように、井田は今、新たな世代に機会を与えようと考えている。そして、自分たちの世代に対しても 「僕らの時代をつくろう」と、動き出している。


◤30U30 AIUMNI INTERVIEW◢
「画家・井田幸昌」
#1 井田幸昌は、なぜ画家になったのか。ひたすら「手」を描いた中学時代
#2 「遺骨」を洗う仕事で気付いた、画家・井田幸昌が生きる意味
#3 画家・井田幸昌が、生涯のテーマ「一期一会」を決めた瞬間
#4 「自分は不良品だ」 画家・井田幸昌がやっと見つけた居場所
#5 井田幸昌が鳥取に凱旋。「変わり続けるもの」と「変わらないもの」とは

文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事