NASAは、探査車パーサヴィアランスが採集したサンプルを持ち帰るミッションによって、火星表面に生命が存在する可能性が明らかになると期待している。しかし、サンプルが地球に届くのは最短でも2033年だ。
大幅に遅れているロザリンド・フランクリン探査車が実際に打ち上げられるまで、何が起きるかわからないが、このESA探査車への期待は大きい。探査車の中核をなすのが生命探査向け小型分析装置MOMA(Mars Organic Molecule Analyzer)で、ドイツ、米国、およびフランスが共同開発した。
計画では2030年10月にESAの探査車が火星に着陸する。NASAの探査車パーサヴィアランスやキュリオシティと異なり、ロザリンド・フランクリンは、7か月間におよびミッション期間中、機器を作動させるエネルギーを主として太陽光発電に頼る。天気がよければ、探査車は1日に70~100mほど移動して地下の堆積物を採取できるはずだ。探査車は着陸後できるだけ早くデータ収集を開始する。
火星にかつて海はあったのか?
ESAの探査車は、火星にnorthern oceanと呼ばれる古代の海が存在していたのかどうかの答えを見つけるかもしれない。火星に存在していたと考えられる唯一の海だ。実際、Oxia Planum(オキシアプラナム)地域にある探査車が着陸する予定の地点は、この古代の海だったかもしれない場所の南端にある。着陸地域の端には39億年前であると年代測定されたデルタがある、とExoMarsプロジェクトの研究者Jorge VagoがオランダにあるESA ESTECのオフィスで私に話してくれた。おそらく、そこから火星の北極にいたる全領域が数十メートルの水で満たされていたという。
40億年ほど前、オキシアプラナムの地下では、何らかの熱水系の中に微生物コロニーが住んでいた可能性がある。火星は当時、火山活動が非常に活発であったと考えられているため、火山灰が海面に落下しただろう。その後、火星から水がなくなり乾燥すると、微生物コロニーは微化石となって沈殿した灰の中に保存される。その後地表下で続いた低温状態も、化石の保存を手助けしただろう。
火星が地表の水を失うと非常に低温になり、表面を45cmほど掘ればそこの温度はマイナス50度で、理想的な冷凍室だとVagoはいう。