宇宙

2023.07.06 10:30

欧州がNASAに先駆けて火星で生命探査に乗り出す理由

安井克至
MOMAは採集した化合物を質量分析計にかけるために、まず気化させる必要がある。質量分析計は対象の物質の化学組成と質量を気体状態で測定する。そのためにMOMAは、熱または紫外線レーザーパルスを使って標本の化学種を気相に変換する。それらの気相化学的試料は、現地で分析され、組成と分布の両方から見て生物である可能性を判定する。

MOMAは熱ではなくレーザーを用いて、最大の有機化合物を最終時に結合していた鉱物から分離するだろう。これによって過塩素酸塩による試料汚染を防ぐことができる。過塩素酸塩は無色無臭の塩類で、この種の試料分析で必要となる熱によって生成され、不要な副産物になることがある。

有機分子が見つかる確率は100%だと思うとVagoはいう。その数字が生命の存在を示唆する確率は50%というところだという。


MOMAにとって最大の科学的課題とは?

結果に有意性を持たせることだと、MOMAの主任研究員でドイツ、ゲッティンゲンのマックス・プランク研究所の惑星科学者Fred Goesmannは述べている。分子の同定には一定の曖昧さがあるが、「生命発見」における有意性は一筋縄ではいかないと彼はいう。楽観的な人は、生命の証拠を見つけたと宣言するだろうが、悲観的な人は、注意深く非生物学的説明を探すだろう。一貫した解釈のためには両面とも必要だとGoesmannは話した。

MOMAは生命の証拠を見つけられるのか?

「証拠」は重い言葉だとGoesmannはいう。発見後の記者会見を想定するなら、公式声明は「これが生命です/でした」ではなく、「現在、私たちの結果に関する唯一の説明は生命です。この結果を導き出す別の方法を思いつくことはできません」になるだろうと彼はいう。

MOMAは過去と現在の生命を区別できるのか?

現在の生命は、保存状態のよい生体分子が大量にあれば証明できる、有機体が代謝的に活性であれば、放射線に起因する損傷を修復できるため、高い密度の生物分子を見つけることができるだろうとVagoはいう。

過去の生命について

微生物ははるか昔に絶滅したのかもしれない。細胞膜が断裂し、核を成す化学物質は散乱して地質学的記録になっているかもしれない。葬られた状態によっては、保存されている可能性があるとVagoはいう。

もし過去の生命の遺物に遭遇したなら、十分な数の独立した生命の痕跡を見つけ、さまざまな試料についてそれを繰り返す必要がある、とVagoは話した。

結論は?

「重要なのは、生物学以外では説明できない証拠を確立することです」とVagoは話している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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