今日までにパーサヴィアランスは、火星の岩石と土から7個のサンプルを集めた。NASAは30個程度のサンプルを2033年に地球に持ち帰り、現在火星に持ち込んでいるものよりはるかに精密な装置を使って分析する計画だ。それらのサンプルは長く待ち望まれていた火星の地質学と水の歴史の年表をもたらしてくれるだろう。
しかし科学者たちは、サンプルに関するこれまでに発見したことに関しても十分熱中している。
火星の赤道のすぐ北に位置するジェゼロ・クレーターは、NASAのマーズ2020ミッションと探査車パーサヴィアランスの目標物だった。なぜならそこには湖底に形成された河川デルタのように見える箇所があり、火星の表面をいつ水が流れたのかを科学者に教えてくれる可能性があるからだ。
「あのデルタがいつ堆積したかは、私たちのサンプル回収プログラムの主要目標の1つです。なぜならそれに基づいて湖がいつ存在していたのか、生命に適していた可能性のある環境条件がいつ存在していたのかを定量化できるからです」とNASAのサンプル回収を担当する科学チームのメンバーである地球化学者のデビッド・シャスターは説明する。
一番の驚きは、ジェゼロ・クレーター底部の4カ所から集めた岩石が、火成岩だったことだとシャスターはいう。火成岩は溶岩が冷えてできたものであり、地球に戻ってきたときには地質年代測定に最適な岩石だ。さらに、水によって変質させられたことを示す証拠にもなる。
「サンプリングという観点から見てそこは広大な場所です。火成岩が水に変質させられた証拠があるという事実、それはこれらの岩石が作られた後のある時点で生命を支えていた可能性のある環境状態を理解する上で、人々を非常に興奮させる材料なのです」という。
このミッション以前、地質学者の間ではクレーターの底面は堆積物か溶岩で満たされていると考えられていた。しかし、Séítah(セイタ、ナバホ語で「砂の真ん中」の意味)と呼ばれる地点では、岩石が地下で形成された後ゆっくり冷却されたように見える。そこを覆っていた何かが、過去25~35 億年の間に侵食されたことは明らかだ。
「私たちはクレーターの底面を操縦しながら、探している岩石が湖に流れ込んだ堆積物なのか、それとも火成岩なのかを、最初の9カ月間文字どおり議論し続けました。そして見つかった火成岩の形状は実に驚くべきものでした。なぜなら、それはクレーターに流れ込んだただの火山岩のようには見えなかったからです。その石は深いところで形成され、大きめのマグマだまりの中で徐々に冷やされたように見えたのです」