その火成岩(シェラネバダの花崗岩と似ているが、組成が異なり粒がずっと細かい)の結晶構造は、ミリメートルサイズのかんらん石と、徐冷によってのみ形成される輝石とが連晶(2種類の結晶が入り混じる)していることがわかった。この粒子の粗いかんらん石は、火星で生まれ最終的に地球に衝突したと考えられているいくつかの隕石に見られるものと似ている。これを裏づけるデータは、パーサヴィアランスに搭載されている機器を使った多重スペクトル画像およびX線蛍光分析によって得られた。
「その石は地下で冷却されて、何かのきっかけで地上に出てきたか、クレーターを満たす溶岩湖のようなものがあって、徐々に冷えていったか、どちらかでしょう」とシャスターはいう。
2番目の近隣地点であるMáaz(マーズ、ナバホ語で火星のこと)で採取したサンプルも火成岩だが、組成は異なる。この層はセイタで露出していた火成岩の層を覆っているので、マーズの石は溶岩湖の上層だった可能性がある。地球の溶岩湖では、高密度の鉱物が結晶化して下方に沈殿し、組成の異なる層を作る。この種の火山岩層は沈積岩(cumulate)と呼ばれ、鉄とマグネシウムに富むかんらん石の沈殿と、それに続く深いマグマだまりの多段階冷却によって形成される。
セイタの徐冷岩ともっと速く冷やされたかもしれないマーズの岩石は、いずれも水による変質を示しているが、その方法は異なる。マーズの石には塩水が凝縮してできたと見られる鉱嚢(こうのう、鉱物が凝集している場所)があり、一方セイタの石は炭酸水に反応していたことが、パーサヴィアランス上での化学分析によってわかった。
クレーターの中にいつ、どれほどの時間、液体の水が存在していたのか定かではない。鉄砲水が衝突クレーターを満たしてわずか数年のうちに蒸発して乾固したのか、地下水が数百万年かけて湖に流れ込んだのか、いずれかが起きたと考えられる。
正確な時期は地球で行われる研究室分析によってのみ明かされる。年代測定に必要な地球化学分析ツールは、パーサヴィアランスに搭載するには大きすぎるからだ。
4カ所の採取地点ではそれぞれ複数の岩石サンプルが採取されており、デルタ付近の安全な場所に保管される予定だ。これらサンプルは機械故障のためにパーサヴィアランス上の最初のサンプルが利用不能になった場合にのみ使用される。その隠し場所には最近採取されたデルタ自身の堆積物のサンプルも入る予定だ。堆積岩は、微化石(微生物の化石)を含んでいる可能性もある、かつて火星に生命が存在していたのであれば。
資料はカリフォルニア大学バークレー校から提供された。
(forbes.com 原文)