教育

2023.06.30

米最高裁「入学選考での人種考慮は違憲」 学生の多様性減る可能性

米首都ワシントンの連邦議会前で向かい合う、アファーマティブ・アクションに反対する人たち(左)と支持する人たち(2023年6月29日撮影、Anna Moneymaker/Getty Images)

米連邦最高裁は29日、ハーバード大学などが入学選考で人種を考慮しているのは憲法に違反しているとの判断を示した。大学の出願者で黒人やヒスパニック系を優遇する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」は、数十年前から米国の多くの大学で採用されてきた。大学側は今後、選考方法の見直しを余儀なくされ、学生の多様性が大幅に減る懸念が出ている。

審理されたのは、私立のハーバード大学と公立のノースカロライナ大学の措置をめぐって保守系の団体「公平な入学選考を求める学生(SFFA)」が起こした訴訟2件。原告側は両大学が入学選考にあたって成績などのほかに人種も考慮しているのは、合衆国憲法修正第14条の「平等保護条項」に違反し、白人やアジア系の志願者を不利にしていると訴えた。

最高裁は9人いる判事のうち保守派6人の多数意見として、平等保護条項の例外は限られており、両大学のアファーマティブ・アクションはその例外に当てはまるようには運用されていないと認定。人種を否定的に扱ったりステレオタイプとして用いたりしてはならないとする同条項の命令に従っていないとも断じ、違憲との判決を下した。リベラル派の判事3人は反対した。

ハーバード大学とノースカロライナ大学は裁判で、自校の入学選考方法は判例にのっとったものであり、人種の考慮は学生の多様性確保に役立っていると主張。こうした選考方法は差別にあたらないと訴えていた。

多数意見を執筆した保守派のジョン・ロバーツ長官は、学生は「人種ではなく個人としての経験に基づいて扱われなくてはならない」と述べ、「多くの大学はあまりにも長い間、それと正反対のことをしてきた」と厳しく批判した。

一方、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事は反対意見で「数十年にわたる先例ときわめて重要な進歩を後退させるものだ」と批判している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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