欧州

2023.06.30 10:00

戦闘車両不足のウクライナ軍、装甲牽引車を改造して前線へ

Photo by Viktor Fridshon/Global Images Ukraine via Getty Images

ロシアの武力侵攻が始まった時点で、ウクライナ軍は約1200両の歩兵戦闘車(IFV:車内に歩兵が乗る装甲戦闘車両)を保有していた。それ以来、1年4カ月にわたる激闘を経て、このうち600両近くが失われた

ウクライナ政府を支援する諸国は、約800両の歩兵戦闘車を供与すると約束している。つまり理屈の上では、ウクライナ軍が利用できる歩兵戦闘車は、開戦時と比較して200両増える計算となる。

だが、2022年2月にロシアがウクライナに武力侵攻し、本格的な戦闘が始まって以来、ウクライナ軍は新たな旅団を数十個単位で立ち上げている。同時にウクライナ国防省は、既存の旅団を増強し、軽装備の戦闘車を重装備に置き換える動きも進めている。

こうした事情から、ウクライナ軍では歩兵戦闘車が大幅な不足状態にある。しかも今回のような戦争では、歩兵隊を輸送・防御し、火力支援を供与する歩兵戦闘車は、戦車を上回る重要な役割を担っているはずだ。

一方で、ウクライナには旧ソ連で開発されたディーゼル駆動のMT-LB(汎用軽装甲牽引車)が数多く存在する。となれば、ウクライナの軍事産業が、8人乗りタイプのMT-LBを改造し、歩兵戦闘車に仕立て上げたのも当然と言えるだろう。

先にネット上で拡散した動画では、新たに装甲を増強し、重機関砲を搭載した改造版MT-LBを6両見ることができる。

ただし、この改造版MT-LBはあくまで急場しのぎであり、差し迫った問題に対する不完全な解決策であることは間違いない。米国の「M2ブラッドレー」やドイツの「マルダー」、スウェーデンの「CV90」をはじめとする最も高性能な歩兵戦闘車の多くは30トン級に属する。装甲を追加しても重量が13トンしかないMT-LBは軽量で、攻撃に対する防御力も心許ない。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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