欧州

2023.06.30 10:00

戦闘車両不足のウクライナ軍、装甲牽引車を改造して前線へ

それでもウクライナ軍は、このMT-LBを転用した歩兵戦闘車に、高機能の遠隔操作可能な砲塔を追加した。14.5mm重機関銃と、昼夜対応型の光学装置とみられる装備を搭載したものだ。戦闘車化されたMT-LBは、敵の攻撃に耐えられる力はないかもしれないが、相手にダメージを与えることはできそうだ。


ロシアとウクライナの戦争では、急ごしらえの装甲車両が次々に生まれているが、MT-LBを転用した歩兵戦闘車は、このリストに新たに加わった一系統だ。そして、ウクライナ側がMT-LBに施した改造は、ロシアが自軍のMT-LBに搭載した旧式の艦砲とは異なり、バランスが取れ、機能もうまく統合されているように見える。その点でこの改造は、MT-LBに「MT-12」100mm対戦車砲を搭載させた車両と同じ方向性と言えるだろう。

動画に登場した、MT-LBを転用した歩兵戦闘車6両が、どの企業によって作られたのかは不明で、今後さらに何両製造されるかもわかっていない。

とはいえ、MT-LBの車体については供給不足の心配はない。そもそも、これらの車両はウクライナで製造されたものだ。ウクライナ北東部、ロシアとの国境から約30kmほどに位置する街ハルキウにある工場が生誕の地だ。

ハルキウの工場は、2010年代には農業用牽引車と、それをベースとした道路建設機械を製造していた工場だが、1970年代から2000年代初頭にかけては、数万台のMT-LBも製造してきた。

ロシア軍は、2022年2月に電撃戦を仕かけた当初の数週間、ハルキウの工場を標的とした。2月末に発生した大規模な火災により、この工場は壊滅状態となり、工場主は、焼け残った製造設備のうち回収可能なものをかき集め、ルーマニアに拠点を移すことを余儀なくされている。

ゆえに、ウクライナが新しいMT-LBを製造できなくなっている可能性はある。だが、新しいMT-LBを製造する必要はないかもしれない。2017年時点で、ウクライナは少なくとも2000両の旧型MT-LBを保有していたからだ。今回お目見えした13トンの戦闘車をはじめとする、さまざまな改造車を作るには十分な数だろう。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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