政治

2023.06.27

プーチン、さらに執念深くウクライナの原発を狙う可能性

Photo by Stringer/Anadolu Agency via Getty Images

ロシアの民間軍事会社ワグネルの脅しは失敗に終わったが、プーチン大統領の権力の掌握を緩めることには成功した。武装蜂起によってプーチンの弱点が露呈したことは明らかで、予測できない行動につながる可能性もある。例えばどんなことが考えられるだろうか。

この問題を抱えた独裁者は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所を標的にして極めて有害な放射能を放出するなど、制御不能な暴挙に出る可能性がある。ロシアの核技術が世界的に重要な位置を占めているだけに、これは異様だ。

これまでのプーチンの誤算は伝説めいており、大規模な兵力の損失を引き起こしている。だがプーチンは罪のない人々に苦痛を与えることを厭わない姿勢を示しており、直近ではカホフカダムを破壊し、工業用潤滑油や化学薬品、肥料を流出させるというエコサイドに相当することを行った。

イラクのサダム・フセイン元大統領が1991年にクウェートから自軍が逃れる間、何百もの油井に火をつけるよう命じたように、プーチンも同様のことができることを示してきた。人命は問題ではない。そのような考え方の自然な延長線上にあるのが、ザポリージャ原発を標的にすることだ。あるいは、同原発は単に戦争の犠牲になるだけかもしれない。

ウクライナのエネルギー・環境元副大臣、オレクシー・リャブチンは「プーチンに影響を及ぼす力を持つ国連や中国、トルコなどは原発からのロシア軍撤退を交渉する必要がある」と筆者に語った。「プーチンはヒトラーの焦土戦術を選ぶかもしれない」とも指摘した。

ザポリージャ原発には6基の原子炉があり、うち5基は停止中。残る1基は原発を稼働させるのに十分な発電をしている。

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、同原発の冷却水の主要供給源であるカホフカダムをロシアが破壊した後にウクライナを視察。だがグロッシは、原子炉の炉心溶融(メルトダウン)を防ぎ、少なくとも数カ月は使用済み燃料を安全に保管するのに十分な冷却水があるとの声明を出した。

ウクライナには、チェルノブイリ原発を除き、稼働中の4原発に計15基の原子炉がある。ロシアがウクライナに侵攻する前、これらの原発はウクライナの電力の半分を供給していた。潜在的には、これら原発のすべてが標的だ。原発への砲撃は、国際エネルギー分野におけるロシアの将来の役割について疑問を提起している。また、1人の狂った人間が復讐を行うことができる世界において、原子力が安全かどうかというジレンマもある。

「ウクライナはロシアの原子力部門に制裁を科すよう各国に働きかけているが、多くの国がロシアの技術に依存している」とリャブチンはいう。「ロシアが原子力を武器として使うのは非常に危険だ。ロシア国営原子力企業のロスアトムは現在、ザポリージャ原発を占拠・管理しているが、同時にその技術とウランを世界中に販売している。理不尽だ」とも指摘する。
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翻訳=溝口慈子

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