体格指数「BMI」は人種差別的? 何が問題なのか

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肥満度を表す体格指数(BMI)を、右派の評論家たちが批判している。この指数に関連して、米国医師会(AMA)が打ち出した新たな方針が、そのきっかけだ。AMAは米国で続く文化戦争における、攻撃対象の1つに加えられたようだ。

AMAは先ごろ発表した指針で、医師らに患者のBMIだけでなく、内臓脂肪、新肥満度指数(Body Adiposity Index)、体組成、相対脂肪量(RFM)、腹囲そして遺伝要因や代謝性要因など、より多くの要因を考慮するよう呼びかけた。

そして、AMAを批判する人たちはこれを「ウォーク(woke)」だと嘲笑している。「ウォーク」は政治的な議論において、否定的な意味で「リベラルすぎる」などというときに使われるバズワードの1つ。本来は、アフリカ系米国人のコミュニティにおいて「社会・人種的不平等に関する意識を持ち続けようと」訴える意味で使われてきた言葉だ。

以前から「問題視」されていた

「人種差別的だ」と指摘されているBMIは、かねて論争の的となってきた。体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求めるBMIは臨床の場で、肥満の診断や肥満にともなう健康上のリスクを評価する際に用いられる。米国では、BMI 18.5~24.9が「標準」、18.5未満は「低体重」、25~29.9は「過体重」、30以上は「肥満」とされている。

このBMIについて、AMAは新指針で、その限界を認めた。一般集団を対象としてみれば、脂肪量との間には強い関連性がある一方で、個人のレベルでそう言えるものではないと説明。体型や体組成には性別、ジェンダー、人種、民族、年齢など、その他の要因が影響を及ぼし得るものだとしている。AMAはBMIの限界や問題点を明らかにするため、長年にわたって研究を行っていた。

だが、こうしたAMAの対応について、保守派の政治評論家ベン・シャピーロは「自ら人種差別的だったことを認めた」「ウォーク」だと冷笑。ニューヨーク大学医学部のマーク・シーゲル教授(臨床学)も出演したFOXニュースの番組で「AMAがキャンセル・カルチャーと関りを持つことになるとは思わなかった」とあざけっている。

右派の批評家やSNSユーザーなどは、LGBTQ+(性的少数者)の権利擁護を訴えるプライド月間への支持や、多様性や公平性、包括性の実現に向けた努力を約束する企業や団体の「社会的意識の高い行動を侮辱」する意味で、この言葉を使うようになっている。
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編集=木内涼子

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