2023.06.25 12:00

GR86の特別仕様でトヨタはアメリカでブランド強化を狙う


今回の「GR86 TRUENO EDITION」は、2024年型GR86の限定車に当たる。プレミアムグレードをベースにつくられた同車は、MTとATの両モデルが用意され、米国向けに860台の限定車が発売される。デザインとカラリングのインスピレーションとなった1980年代のAE86へのオマージュとして、フロント・バンパーリップとリア・デッキリッドに、「トレノ エディション」のバッジが装着されている。

さらに、ボンネットにはブラックのラッピング、ロゴ入りのサイド・パネルのグラフィック、またスポイラー、ドアハンドル、ミラーなど、AE86を感じさせるカラー装飾が施される。ホイールは、トレノ エディション独自のブラックメタリック仕上げの18インチ10本スポークアルミホイールを採用する。




「トレノの『ハンドリングと乗り心地を最適化し、ブレーキングを強化する』ためにGazooがチューニングした」とトヨタは言う。パフォーマンス・パッケージには、ザックス製ダンパーと、制動力抜群の真っ赤な4ピストン付きブレンボ・ブレーキがつく。これらはGR86の通常の2.4リッターエンジン・セットアップに加わり、最高出力235psを発揮しチューニングされている。

アメリカ専用車ということで、確かにこのGR86トレノは日本では買えないけど、最近ボディ剛性アップが図られたGR86は、350万円ぐらいで、日本で手に入る。ここだけの話だけど、近々、日本でもGR86トレノに似たスペックが買えるようになるような気がする。「GR86トレノは日本でなぜ買えないのか?」と嘆く日本のファンをなだめるために一言いうと、アメリカでは、欧州と日本で数々の賞を受賞した「GRヤリス」は買えない。それでアイコにしてほしい。

トヨタのアメリカでの活動を見ていると、真剣にブランドイメージを強化しようとしていると見受けられる。スープラの米国専用車、GR86の米国専用車、そして「クラウン」と「トレノ」という、今までにアメリカで使ったことのないネーミングを導入することは、とても良いことだ。やはり、自社の深い歴史から有名な名前を使ってアメリカでブランドを強化すると、「EVの波に乗り遅れた」などという最近の少しネガティヴなニュースの余波もだいぶ収まって、スポーティーでポジティブなイメージが広がるのではないだろうか。

最近、僕が興味津々なのは、アメリカでトヨタが今までに使ったことのない名前を使い始めていること。今回、トレノもそうだけど、昨年からは50年以上前から日本でしか使っていない「クラウン」を使い出しているが、現地でどの程度浸透するのか。正直なところ、アメリカに「トレノ」というネーミングを初めて上陸させるということは、アメリカが日本市場に対して、初めて「シェルビー」みたいな名前を導入させるのと同じことだね。トレノを通して、日本のスポーツカーの文化が少しでも伝われば良いと思う。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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