働き方

2023.06.24 09:00

ベストセラー作家と働かないミニマリストが語る、1000円で始める「主体的生き方」

お金は「目的」ではなく「手段」

原田:シンプルに考えると、お金って「労働を交換するときの単位」に過ぎないと思うんです。私たち人類は、もともと衣食住のすべてを自給していました。そこから物々交換の文化が生まれ、さらにはより便利な取引手段としてお金が誕生したそうです。自給による多忙な生活から解放された結果、社会は分業が進み、職業の幅が広がったんです。娯楽に関する仕事はその最たる例で、日本において専業作家が誕生したのは江戸時代のことです。長く平和な社会が続くことで、初めて豊かな文化が生まれるんですね。

NATTY:同感です。だからこそ、仕事が生きる目的になってはいけません。あくまでも仕事とは、豊かな生活を実現するための手段です。目的と手段をはき違えて仕事やお金に固執すると、自分らしく生きるためのバランスが崩れてしまいます。僕が行っているコンサル業務も、突き詰めれば「自分らしい生き方」の追求です。自社で雇用している社員だけでなく、その社員の家族を含めて大切に扱えるような仕組みをつくりたい。そうした思いから、今年5月に友人とふたりで「民間の労基」という企業を起ち上げました。

原田:具体的にはどのような仕事をするんですか?

NATTY:簡単に言うと、労働局や労働基準監督署が行っていることを、僕たち民間でやってしまおうという仕事です。独自の雇用条件や基準を設け、もっと雇用する人を大切に扱える仕組みを目指します。「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、なかなか実現してないじゃないですか。週4日労働にはなったものの、週40時間という労働時間そのものは変わっていなかったり、営業で13時からアポがあったらその前の時間に別のタスクが課せられたり……。こうした体制にメスを入れることによって仕事のモチベーションやパフォーマンスが上がっていけば、労働時間の削減に繋がり、結果的に労働者たちの家族をも大切にすることに繋がっていくと思うんです。

原田:社員の家族も大切にできる仕組みができれば素敵ですよね。NATTYさん自身は「生涯独身」を明言していますが、これはなぜでしょう。

NATTY:自分がやりたいことを優先した結果です。もちろん、結婚は素晴らしいものですし、僕自身も親の愛情を受けて育ちました。すでに満たされているので、そこから「何かしら社会に還元したい」と考えたときに、時間と自由に恵まれた独身のまま生きるという選択に至りました。
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文=松本晋平 写真=ヤン・ブース

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