法螺貝の役割を生かした生き方「ホラ・ドリブン」

先の見えない不確定な時代。企業は中長期目標でもある「ビジョン」を掲げ、社内外の共感を集め、自ら未来を切り開こうとしている。そのときの「ビジョン」は、人をワクワクさせるものでなければいけない。それって「ホラ」とも言い換えられるかも。ウソではなく、ホラー。一体何が違うのか? そしてホラ・ドリブンの効果とは何か?

人生をよりよいものにしたい? ビジネスを飛躍させたい? ならば「ホラ」を吹きましょう。ホラ吹きって、ウソつきのことでしょ?と思うかも。でも、ホラにはすばらしい効能があります。
 
私たちは、ホラとは何かをまだちゃんと理解できていないかもしれない。ホラの文化や、語源である法螺貝の役割を知れば、いい「ホラの吹き方」が見えてくる。

というわけで、法螺貝の響きとともにはじめます、ちょっと新しいホラ話。ブオ~!ブオ~!

ホラとウソの違い

南米の草原に住む人々の間には、昔から「ホラ吹き大会」が開かれてきた、という話を聞いたことがあります。年に一度人々が集まり、とっておきのホラを披露し、いちばん素敵な大ボラを吹いた人が優勝。しかし、大会にはひとつ厳格なルールがあります。それは「ホラはいいけど、ウソはだめ」。
 
ホラは「人をワクワク喜ばせるもの」で、ウソは「人を傷つけるもの」と大きな違いがあるとのこと。言われてみれば、ホラにはどこか明るい気分があり、ウソは人をだます要素が強い。その差はとても大きいことを、ホラ吹き大会を続けるなかで強く感じてきたのかもしれません。ホラの基本は「決して人を傷つけることなく、ワクワクさせるでっかい話」。つまりは損得を超えた「ビジョン」とも言えるのかもしれません。

そもそも「ホラ」の語源は何なのか、それは「法螺貝」。山の中でブオ~ブオ~と吹かれるあの貝のことです。法螺貝→大きな音を出す→大きなことを言う、ということで、大げさなこと・でたらめなことを言うたとえになったそう。また、法螺貝の役割を見ていくと、これまで語られることのなかった「ホラの役割」も見えてきます。これがまあ、なかなか示唆に富んで面白いのです。

1. 場の「距離感」を確かめる役割

法螺貝は、修験道の人々が山に修行に入る際、ブオ~と吹かれます。それはなぜか。諸説あるそうですが、いまから入る山が「どんな広がりをもっているのか」を確かめていたからだとか。法螺貝の音は遠くまで響くので、こだまする音で山々との距離感がわかります。反響の具合によって、いい広がりの場なのか、そうでないのかといった「感じ」がつかめるのです。

では「ホラ」の場合はどうか。法螺貝と同様、いいホラを吹いたらまわりの反響によって人々や場の「感じ」がつかめます。信じる人、信じない人との距離感を知り、ノリや感度のよし悪しがつかめます。何かを成し遂げていきたいと思うときに、まず誰を仲間にすべきか。その場が目的達成のためにいい場なのか。そんなことを知るために、ホラは大いに機能するでしょう。
三大修験山のひとつ、英彦山にて。 法螺貝の響きで山々の距離感をつ かむように、いいホラは仲間との 距離感がつかめる。

三大修験山のひとつ、英彦山にて。 法螺貝の響きで山々の距離感をつ かむように、いいホラは仲間との 距離感がつかめる。


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文=中村直史 イラストレーション=尾黒ケンジ

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