働き方

2023.06.24 09:00

ベストセラー作家と働かないミニマリストが語る、1000円で始める「主体的生き方」

NATTY:新聞小説と言えば、『百万円の作りかた』(読売新聞オンライン)も読ませていただきまして、まさにその影響で「1日1000円生活」に挑戦中なんです。

原田:そうだったんですか!?

NATTY:お米や鶏モモ2kgなど、まとめ買いをするとその日の出費はオーバーしますが、帳尻を合わせるのが面白い。ゲーム感覚のような楽しさがあります。

原田:私も1日1000円に挑戦していた時期がありますが、いざやってみると意外といけますよね。

NATTY:原田先生の作品は「経済的な困難」をテーマにされることが多いんですか?

原田:一般的に経済小説は、企業買収などのお金の規模が大きな作品が目立ちますよね。私の小説には、私が普段から行っている家庭の節約術など身近なお金の話を盛り込むことが多いんです。決して珍しいテーマではないと思っていましたが、いざ出版すると「細かなお金を扱った作品は意外と珍しくて面白い」との評価をいただきました。

NATTY:「人生の主役になるためにまずは百万円貯める」という言葉は印象的でした。

原田:あれは大学時代の先生の言葉がモデルになっています。講義中の余談でしたが、100万円の貯め方を説明したあとに「100万円さえあれば、もしも結婚後にDVされても安心して逃げることができるから」って。私は笑いながら聞いていましたが、強く印象に残りました。お金に余裕があれば、いざというときも自由に行動できる。これってすごく大切なことですよね。

NATTY:「お金に余裕があると情緒が安定する」というのは真理ですよね。「世の中お金じゃない」などといわれますが、日本で生活している以上、やはり最低限のお金は不可欠です。

原田:以前、とある不動産屋から「400~500万円程度の中古の一軒家を3軒も買えば、家賃収入でもう働かなくて済みますよ」と勧められて驚きました。そうか、そういう考え方もあるのか、と。当時、まだ小説家としては厳しい時期で、それでもこの仕事を続けたかった。だから不動産投資の良し悪しは別として、何らかの一定収入を得る方法さえあれば、自分の好きな仕事や生き方を選択できる……という考え方はある種の発見でした。

NATTY:例えば月10万円で生活可能ならば「10万円分の労働だけすればいい」と意識を変換してみると、人生の見え方が大きく変わりますよね。収入が下がることや生活水準が下がることに恐怖心を抱く人は多いと思いますが、その一方で僕のような生き方に共感する人も少なくない。YouTubeで自分の生活を発信するなかで、そうした生き方に一定の需要があることがわかりました。
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文=松本晋平 写真=ヤン・ブース

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