2023.06.06 10:00

受け入れ側からも高まる日本人のモンゴル観光への期待

ゴビ砂漠にはウランバートルから空路で1時間ほど

会場にまず入館すると、頭上から吊り下げられた大型パネルに、現代のウランバートルのクラブシーンや髪の毛を逆立てたロック少年、ショッピングモールでブランドバッグを肩にかけた若い女性たちの姿とともに、1920年代に撮影された遊牧民の家族の集合写真などが交互に映し出される。
「邂逅する写真たち―モンゴルの100年前と今」の企画展では1階ホールの右手には現在のウランバートル市内のパノラマ写真。パネルには現代の若者たちが映されていた

「邂逅する写真たち―モンゴルの100年前と今」の企画展では1階ホールの右手には現在のウランバートル市内のパノラマ写真。パネルには現代の若者たちが映されていた


また1階ホールの左右の巨大な壁面には、高層マンションや渋滞で道路が車で埋め尽くされた現代のウランバートル中心部のパノラマと、ほぼ同じ場所で1913年に撮影されたチベット仏教寺院を中心に集落が広がる100年前の世界が対峙される構成になっていた。
企画展会場の1階ホールの左手には1913年に撮影されたウランバートルのパノラマ写真

企画展会場の1階ホールの左手には1913年に撮影されたウランバートルのパノラマ写真
2階展示は草原世界の100年前と今がテーマ

2階展示は草原世界の100年前と今がテーマ


同じようなことは、都市を離れた草原でも起きている。現代の遊牧民の若者たちは馬ではなく、バイクにまたがり、草原を疾走する。遊牧生活と現代的な都市生活を綱渡りする彼らの姿こそ、まさに今日のモンゴル社会のリアルな実情といってもいい。
1920年代に撮影された遊牧民の家族の集合写真

1920年代に撮影された遊牧民の家族の集合写真


この企画展で展示されている現代を写した写真の多くは、1989年ウランバートル生まれのB.インジナーシさんという新進写真家の作品だ。彼はグローバル化や階層化が進むウランバートルとともに、現代化する草原で暮らす人たちの姿も撮り続けていて、「ナショナルジオグラフィック」や「タイム」などの海外メディアにも取り上げられているという。

モンゴルの人気ツアールート

こうしたモンゴルという国の社会の現代化と急速な都市化の進行は、タイムラグはあるものの、日本も含め、他のアジアの国々が経験してきたことだ。
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この国はそのプロセスを、自国の固有の歴史と特殊事情を抱え込みつつも、いままさにたどっていると言える。その変化の諸相を見つめ、記録していこうとするB.インジナーシさんのようなドキュメンタリストが登場するのも、社会変動の激しい時代だからこそで、それは中国や他のアジアの国々でも同様だった。

その意味でも、前回のコラムでも書いたように、ウランバートルは世界のどこにでもある現代都市と同じなのである。

そう思うと、いやだからこそ、筆者はどうしてもモンゴルに行きたくなったのだ。でも、それは何も従来型のモンゴルのイメージを否定しようということではない。
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先ほどのモンゴル観光セミナーでは「モンゴルの見どころ、人気ツアールート」として、国内各地の風光明媚な景勝地や歴史スポットなどが紹介されていたが、筆者が魅力を感じたのは、「ノーマディックモンゴリア」と称される草原の遊牧生活を体験し、ゲルに泊まった夜に眺める満天の星空と、モンゴル南部に広がるゴビ砂漠への訪問だ。

今日のモンゴルでは、都市を歩き、草原と星空、そして砂漠を訪ねるのがスタンダードな旅のスタイルなのである。

昨年、モンゴルから帰国して、ユーチューブで楽しい動画を見つけた。それはミュージシャンのピエール瀧さんの番組「ユアレコ(YOUR RECOMMENDATIONS)」で、「(旅先で)道行く人に『あなたのオススメは?』と尋ね、そのオススメどおりに旅する」というものだ。
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文=中村正人 写真=中村正人、(株)ジャパン・エア・トラベル・マーケティング

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