2023.06.06 10:00

受け入れ側からも高まる日本人のモンゴル観光への期待

ゴビ砂漠にはウランバートルから空路で1時間ほど

5月中旬、パレスホテル東京(千代田区丸の内)で「モンゴル・日本観光フォーラム」というセミナーが開催された。大臣顧問をはじめとしたモンゴル自然環境・観光省一行と現地旅行会社が来日して、日本人観光客の誘致を図るのが目的だった。

モンゴルでは昨年3月から外国人観光客の訪問をいち早く完全開放。その頃から入国前のPCR検査は不要で、ノービザのモンゴルは日本人にとって最も行きやすい近隣の外国の1つだった。

2021年7月には、日本の支援で新しいウランバートルの国際空港(チンギス・ハーン国際空港)もオープン。2022年は日蒙外交樹立50周年だったこともあり、こうした誘致活動は昨年からすでに始まっていた。
「モンゴル・日本観光フォーラム」には約100名の日蒙の関係者が集まった

「モンゴル・日本観光フォーラム」には約100名の日蒙の関係者が集まった

日本と同じ民主主義の国

ところが、日本人のモンゴル観光には残念な現状もあった。
2019年のモンゴルの国別インバウンド観光客数

2019年のモンゴルの国別インバウンド観光客数


コロナ禍前の2019年にモンゴルを訪れた外国客57万7300人のうちで、1位は中国からの16万8298人、2位がロシアの14万1927人だった。国境を接した2つの大国が上位を占めるのは当然としても、3位の韓国10万1279人に対して4位の日本はわずか2万4419人で、全体の4.2パーセントに過ぎなかったからだ。

背景には、日本人のモンゴル理解が長らく思考停止していたことがあると思う。羊やゲル、相撲の力士に象徴される、のどかな草原の国という先入観である。

こうしたイメージを後生大事に抱え込み、現地社会の変化も見て見ぬふりをして、今日の日本人の旅の動機づけに関わる情報環境の変容も含め、市場の変化をきちんと取り込もうとしなかった日本の旅行業者の古い体質も大きかったと思う。

一方、モンゴル側の日本人の訪問に対する期待の高さはわれわれの想像以上のものがある。

昨年も同じ時期に開催されていた「モンゴル・日本観光フォーラム」では、モンゴルの関係者から「モンゴルはロシアとも中国とも違う、日本と同じ民主主義の国です。もっと日本の人たちに旅行に来ていただきたい」という発言もあったほどだ。

期待の高さには理由がある。もちろん、コロナ禍に加えてロシアのウクライナ侵攻が始まり、彼らにとってインバウンド観光の大半を占めていた中ロ両国からの渡航者が見込めないこともあった。

しかしそれよりも、これら権威主義的な両大国に挟まれ、歴史的にも強い影響下にあった彼らとしては、そうした過去に複雑な経緯のない日本の人たちにもっと訪れてほしいと考えるのは自然なことかもしれない。

ところで、筆者がどうしてモンゴルに行こうと思ったかというと、きっかけとなったのは、昨年3月から5月にかけて大阪府吹田市の国立民族学博物館の特別展示館で開催された「邂逅する写真たち―モンゴルの100年前と今」という企画展に啓発されたからだ。
2022年春、大阪の国立民族学博物館で開催された企画展「邂逅する写真たち―モンゴルの100年前と今」

2022年春、大阪の国立民族学博物館で開催された企画展「邂逅する写真たち―モンゴルの100年前と今」


この企画展は、約100年前にモンゴルを訪れた欧米や日本の探検家たちが撮影した写真と、現代モンゴルの若手ドキュメンタリー写真家が撮影した作品を通して過去と現代を対比するというもので、日本人のモンゴル理解に大きな刷新をもたらす内容だった。
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文=中村正人 写真=中村正人、(株)ジャパン・エア・トラベル・マーケティング

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