2023.06.06 10:00

受け入れ側からも高まる日本人のモンゴル観光への期待

ゴビ砂漠にはウランバートルから空路で1時間ほど

つまり、現地で出会った人たちに旅先や食事の場所などをそのつど教えてもらいながら、アポなしで旅をする姿を動画に収めていくという番組だ。
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ピエール瀧さんたちも番組でモンゴルを訪れていた。大まかな訪問先は決めていたのだろうが、ウランバートルのホテルを予約した以外は、律儀に地元の旅行会社を訪ねてドライバーを見つけ、遊牧民の家族が経営するゲルに泊まったり、通りで会った現地のモンゴル人におすすめレストランのありかを聞いたりしながら、あちこちを訪ねていた。

実を言うと、彼らがモンゴルを訪ねたのは、どうやら筆者とほぼ同じ時期だったようだ。遊牧民にもてなされて羊スープやモンゴル男性が大好きな焼うどん「ツォイワン」を食べていたこともそうだが、前回紹介したウランバートルの現代モンゴル料理店「モダン・ノマズ」にも現れていた。もしかしたら彼らとどこかですれ違っていたかもしれないと、ひとり苦笑してしまった。

筆者も人のことは言えないが、いい歳をしたオヤジが海外で言葉もわからず、行き当たりばったりの旅を続けるという、一見バカバカしくも思える姿に大いに共感した。
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羊料理に飽きたので、イタリアンを食べたいとピエール滝さんが言い出したことから、地元の人におすすめを聞いて、訪ねたショッピングモールのレストランのテラスの周辺がそこかしこでマンション建設を進めていて、動画には工事音がガンガン入っていた。彼らはそんな騒音の中でモンゴル風カルボナーラを食べることになったように、現在のウランバートルの実情を伝える映像があふれている番組なのである。

現地の人たちとの交流のいたるところで自動翻訳機が使われ、なんとか旅が続いていく様子もリアルだった。これが現代の旅人の姿だと思う。

もうずいぶん前からのことだが、日本人の海外旅行はかつての姿とはまったく違ったものになっていると思う。その意味や求めるものもそうだ。それはユーチューブやSNSなどに配信されている無数の旅動画を見ていてもよくわかる。
草原のゲルに泊まると、めまいがするほどの星空に出合える

草原のゲルに泊まると、めまいがするほどの星空に出合える


お互いの国の文化や風土は違っていても、その差異を認め、面白がりながら、世界に広がるグローバル化の華やかさと同時に苦さや痛みを知る者同士として、同じ時代を生きているという共感に出合えることが、人を旅に誘うのではなかろうか。

今年のGWにモンゴルを訪ねた友人によれば、ウランバートル市内では日本人観光客の姿をよく見かけたというが、昨年の段階でモンゴルに行くとは、ピエール瀧さんたちは海外旅行の穴場をよく知る情報通だと思う。

モンゴルは円安時代の最近でも、それほど旅行での現地経費が気にならない物価水準という、もはや数少ない海外渡航先でもある。その点もぜひ覚えておいてほしい。

文=中村正人 写真=中村正人、(株)ジャパン・エア・トラベル・マーケティング

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