野生のハチ(および地球に住むほぼすべての生物)にとっては残念なことに、2050年までに、拡大する地球人口の3分の2が都市部に住むと予測されている。すなわち、世界の都市が成長し、人々がハチにとって住みやすい生息地を分断あるいは破壊するにつれて、都市部のハチが経験するであろう環境ストレス要因は増えていくばかりだ。こうした環境被害は、野生のハチの生物種多様性の存続に、いっそう深刻な脅威をもたらすだろう。
「密集した都市部のつながりの薄い生息環境は、近親交配の増加による遺伝的多様性の減少を招くだけでなく、高い病原体多様性を生み出すことで、都会のハチたちはさらに多くの病原体にさらされることになります」とリーアンは説明した。
こうした心配な結果が出る一方で、野生のハチの健康と繁殖力を維持するために、都市が実行できる簡単な行動がある。緑地をつなぐ生息回廊を作ることだ。
「ハチの生息地同士をつなぎ、より遺伝的多様性の高い環境を作る最善の方法は、緑地と灌木と雑木林を利用することだとわかりました」とチャウ博士は指摘する。「これらの生息地コネクターの維持と製作に焦点を当てた保護活動は、野生のハチの健康を助ける大きな力になるでしょう」
ハチ類は最も主立った花粉媒介生物であり、世界で花を咲かせる植物の87%以上、食用作物の75%以上に対して忙しく授粉している。しかし、都市はいわゆる「ヒートアイランド」を生み出し、その気温は周辺地域よりもずっと高い。都市ヒートアイランドは、開花時期や生育時期に影響を与え、植物はハチたちが飛び回りエサを探す時期の前あるいは後に花を咲かせる。
都市部の小さな緑地に集中するハチたちは、スピルオーバー感染を経験するおそれもある。汚染された花を訪れたハチたちの間で、異なる種のハチであっても、病原体に感染する可能性は高い。
しかし、ハチや植物病原体に関する人類の知識が増えることによって、都市部のハチ個体数減少の脅威を早期に検知し監視することが可能になる。
「将来の研究では、遺伝的多様性の減少と、都市部の野生のハチの適応度の相関を研究すべきです」とチャウ博士は指摘した。
出典:Katherine D. Chau, Farida Samad-Zada, Evan P. Kelemen, and Sandra M. Rehan (2023). Integrative population genetics and metagenomics reveals urbanization increases pathogen loads and decreases connectivity in a wild bee, Global Change Biology | doi:10.1111/gcb.16757
(forbes.com 原文)