宇宙

2023.06.04

土星の衛星エンケラドゥスに9600kmの巨大水柱、ウェッブ望遠鏡が発見

土星の衛星エンケラドゥスから噴出する水柱が9600km以上広がっているところをNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測。画像は想像図(Getty Images)

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、土星の小さな衛星エンケラドゥスから新たに巨大な水蒸気の水柱が宇宙に向けて放出されているところを観測した。

水柱は全長約9600kmと推定され、エンケラドゥスからこの大きさのものが放出された初めての観測例だ。

最大の目標

直径わずか500kmと小さな衛星でありながら、エンケラドゥスは地球外生命を探す宇宙生物学者にとって最大の目標となっている。というのも、エンケラドゥスはクレーターだらけで「トラ縞模様」の氷地殻(こおりちかく)の下に、深さ40kmの水の海と岩石質の海底が存在しているからだ。

エンケラドゥスの地下海(ちかかい)のような過酷な環境には、微生物や「extremophiles(極限環境生物)」が存在している可能性があると考えられている。

主として土星の引力によって、その衛星は地質学的にも活発であり、岩石コアは生命が存在するために不可欠と考えられる海に、エネルギーと熱を供給している。

しかし、その温かくて塩辛い海に目のない不気味な海洋生物がいないことはほぼ間違いない。なぜなら、そこで維持可能なバイオマス(生物量)の総量は、クジラ1頭分より少ないと計算されているからだ。 

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影したエンケラドゥスの巨大な水柱。その大きさは衛星自身の40倍以上におよぶ。挿入図は探査機カッシーニが写したエンケラドゥスで、赤い四角は、ウェッブ望遠鏡から見たエンケラドゥスが水柱と比べていかに小さいかを表している(NASA, ESA, CSA, STScI, G. Villanueva (NASA’s Goddard Space Flight Center), A. Pagan (STScI))ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影したエンケラドゥスの巨大な水柱。その大きさは衛星自身の40倍以上におよぶ。挿入図は探査機カッシーニが写したエンケラドゥスで、赤い四角は、ウェッブ望遠鏡から見たエンケラドゥスが水柱と比べていかに小さいかを表している(NASA, ESA, CSA, STScI, G. Villanueva (NASA’s Goddard Space Flight Center), A. Pagan (STScI))

衝撃的な発見

衛星の氷地殻の割れ目から、氷の粒子や水蒸気、有機化合物などの噴流を吐き出している間欠泉は、以前にも複数観測されている。NASAと欧州宇宙機関の探査機、カッシーニは長さ数百キロメートルにおよぶ噴流を発見しているが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見したものに匹敵する規模のものはかつてなかった。
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翻訳=高橋信夫

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