宇宙

2023.05.31

探査機ジュノー、木星で地球のものに似た稲妻の存在を明らかに

木星の北半球で起きている稲妻の想像図(Getty Images)

太陽系最大の木星は、直径が地球の約11倍で岩石質ではなくガスからなる惑星であるにも関わらず、地球とほぼ変わらない稲妻が存在する。

木星の稲妻(大気中で起きる巨大な電気火花)の存在という意外な真実が、NASAの木星探査機ジュノーが集めた5年分のデータから明らかになった。ジュノーは2016年半ばから木星を周回している。

Nature Communications誌に掲載された最新論文は、ジュノーの電波実験装置が取得した高精度データの詳細を報告している。この装置は木星の大気、磁場および磁気圏(惑星を覆う惑星の磁場に支配された領域)の相互作用を理解するために作られた。

主著者のイヴァーナ・コルマソヴァはチームとともに、木星で電波パルスがミリ秒間隔に発生していることを発見した。それは、地球の雷雨で見られるものと似た、段階的な稲妻の発生を示唆している。

結果は、木星で稲妻が発生する仕組みが、地球大気の雲の中で発生する稲妻に似ている可能性があることを示していると著者らは主張している。

木星で稲妻が発生する過程は地球と似ているかもしれないが、そこには大きな違いもある。木星の積乱雲(雷雲)は雲底から雲頂まで40マイル(約67km)にもなり、地球のものより5倍も高い。さらに、木星で起きる稲妻の閃光は、地球最大と言われる「スーパーボルト」の3倍のエネルギーを持つ。

ジュノーが約7年前に木星系に到達して以来、次々と木星の謎めいた特徴が暴かれてきた。

ジュノーは「大赤斑(Great Red Spot)」の研究も行ってきた。大赤斑は直径2万6000kmという地球全体の約2倍、木星自身の約6分の1にもなる太陽系最大の嵐だ。少なくとも1830年以来、嵐は続いている。

ジュノーは、マイクロ波放射計(MWR)を使った調査も行い「大赤斑」のような木星の高気圧は頂部では冷たく底部では温かく、一方サイクロン(低気圧)は上が温かく下が冷たいことを突き止めた。

11億ドル(約1500億円)をかけたこのソーラー駆動探査機は、2011年8月5日に打ち上げられ、2016年7月4日に木星周回を開始した。

現在、ジュノーは木星の楕円軌道を38日周期で回っており、延長されたミッションは2025年9月15日、76回目の周回途中に木星の擾乱(じょうらん)する大気に向かって降下して分解する。これは、誤って木星の衛星のいずれかに衝突し、汚染してしまう可能性を回避するためだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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