宇宙

2023.05.28

これが太陽の真の姿だ イノウエ望遠鏡撮影の驚くべき画像8枚公開

太陽の表面層(光球)で捉えた静穏太陽の微細構造(NSF/AURA/NSO IMAGE PROCESSING: FRIEDRICH WÖGER(NSO), CATHERINE FISCHER (NSO))

世界で最も強力な地上太陽望遠鏡を使用し、太陽の驚くべき姿をクローズアップで撮影した画像8枚が公開された。

撮影に使われたのは、ハワイ州ハレアカラにある米国国立科学財団のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)。同望遠鏡は2020年にファーストライト(初観測)を行ったが、現在も試験運転中だ。今回公開された画像は、この望遠鏡の今後の活躍を期待させるものだ。
イノウエ太陽望遠鏡が撮影した新しい太陽画像のコラージュ。同望遠鏡が試運転期間中に捉えた太陽データのプレビューとして5月22日に公開された(NSF/AURA/NSO)

イノウエ太陽望遠鏡が撮影した太陽画像のコラージュ(NSF/AURA/NSO)


昨年6月にも、イノウエ太陽望遠鏡が撮影した太陽の素晴らしいクローズアップ画像が4枚公開されていた。当時初めて撮影された太陽大気の最も低い層である光球(photosphere)は、今回の画像群でも捉えられている。

口径4mのイノウエ太陽望遠鏡は、太陽研究者が太陽およびその地球に対する影響を理解する上で、大きな前進をもたらすと期待されている。宇宙に設置された太陽観測装置には、米航空宇宙局(NASA)のパーカー・ソーラー・プローブや欧州宇宙機関のソーラー・オービターがある。

2024年か2025年には太陽極大期が訪れるため、イノウエ太陽望遠鏡は、まさに最適なタイミングで正式稼働を開始することになる。太陽の活動は約11年の周期で増減を繰り返している。活動度は表面の黒点の数によって測定される。

この約11年間に、黒点の数が最少となる「太陽極小期」と、黒点の数が最大となる「太陽極大期」が訪れる。黒点の数は1755年から毎日観測が続けられており、現在は非常に多い。

黒点のクローズアップ写真に加えて、今回の新画像には光球のセルがハニカム・パターンを示し、熱く明るいプラズマが、冷たいプラズマの暗い間隙に囲まれている様子も捉えられた。熱い太陽プラズマはそれらのセルの明るい中央部に湧き出し、冷却され、その後暗い間隙の表面下に沈む。このプロセスは対流と呼ばれている。画像では、光球の上の層である彩層で何が起きているかも見ることができる。

公開された画像は、2022年にイノウエ太陽望遠鏡のVisible-Broadband Imager(VBI、可視光ブロードバンド撮影装置)を使用して撮影されたものだが、過去2年間の調整中に撮影された数多くの画像のごく一部にすぎない。ハワイ・マウイ島の標高3000メートルを超える火山の頂上にあるハレアカラ天文台に建設されたイノウエ太陽望遠鏡は、世界最大の鏡と口径を持つ太陽望遠鏡だ。

太陽は地球から約1億5000万kmも離れているが、毎秒およそ500万トンの水素燃料を燃やしているため、望遠鏡をオーバーヒートさせずに観測することは容易ではない。そこでこの天文台では、夜間に氷を作り、望遠鏡を包むドーム上の冷却プレートに冷媒を循環させている。さらに、主鏡を太陽光の大部分から守るための冷却された金属製「ドーナツ」も備えている。

イノウエ太陽望遠鏡は、かつて「Advanced Technology Solar Telescope(先進技術太陽望遠鏡)」と呼ばれていたが、ハワイ州選出の上院議員で、科学・技術・工学・数学の分野を推進したことで知られる故ダニエル・K・イノウエをたたえて名称が変更された。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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