宇宙

2023.06.02 14:00

NASAは2033年に火星への有人ミッションを行なうべきだ

ミッションの仕組み

ハードウェアはほぼ揃っている。NASA打ち上げロケット、スペース・ローンチ・システム(SLS)と宇宙船オリオンはすでに実証済みであり、SpaceXのファルコンヘビーロケットも同様だ。Blue Originのニューグレン、United Launch Alliance(ULA) のVulcan Centaurも、2030年代には準備が整っているはずだ。

最大の課題は「トランスハブ」と呼ばれる居住用宇宙船を作ることだ。組み立ては地球高軌道または月軌道上で3、4回のSLS打ち上げを使用して行われる。SLSの打ち上げ回数は、宇宙船の重量(すなわち、どれほど快適か)および何人の宇宙飛行士が乗り込むか(3~4人と想定されている)による。

「居住用宇宙船の動作を確認し、問題を修正するために、地球軌道または月軌道プラットフォームゲートウェイでテストする必要があります」と2023 Humans To Mars Summitでプライスは語った。

2033年フライバイ・ミッションの流れは以下のとおりだ。

・SLSおよび商用ロケットがハードウェアを軌道に運ぶ
・クルーがオリオンでミッション機に向けて飛び立つ
・火星への旅は200日かかり、クルーはトランスハブに滞在する
・火星到着後、クルーは火星の高軌道で31日間過ごす
・地球への帰路はオリオンで339日かかる。金星でフライバイを行い重力アシストを受ける

NASAが2033年に火星に着陸しない理由

NASAは2033年までの予算を確定させており、そこには費用がかさむ火星着陸ミッションは含まれていないと論文に書かれている。着陸するためには新しい着陸船を設計、製造する必要がある。皮肉なことに、予算はほとんどがマーズ・サンプル・リターン・ミッションに関わるもので、同ミッションはNASAの2030年代予算の大部分を占め、同局の惑星科学プログラムに影響を与えることになるだろう。

しかし、2033年の火星着陸はまだ可能性がある。「もし民間の商用計画が、有人水準の着陸船を2033年までに製造できれば、着陸ミッションは検討可能である」と論文にある。そのシナリオでは、火星着陸船は4人のクルーを地表に降ろし、後に火星軌道に戻す。そのミッションの期間は950日間だ。
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翻訳=高橋信夫

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