しかし、ここ数年、ブータン王室は、このエネルギーの新たな利用法をひそかに考案している。
ブータンは、水力発電所をビットコインのマイニング(採掘)施設に変え、エルサルバドルと並ぶ世界で数少ない国営のマイニング施設を持つ国になろうとしている。
ブータン政府は現地メディアのThe Bhutaneseの4月28日の記事で、ビットコインの価格が約5000ドルだった数年前にマイニングを開始したとコメントした。同国の財務省は、この事業に関するフォーブスの質問に答えておらず、正確なマイニングの開始時期は不明だ。しかし、ビットコインが5000ドルだったのは、2019年4月のことだった。
ブータンは、暗号資産分野のパイオニアとして知られる中国の起業家ジハン・ウーが設立したナスダック上場のマイニング企業「ビットディア・テクノロジーズ」と交渉中だ。ビットディアは先月、投資家に対し、今四半期に着工予定のブータンのマイニング施設用に100メガワット(MW)の電力アクセスを確保するために交渉中であることを明らかにした。シンガポールを拠点とする同社は、4月に特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場した。
中国やインド、ネパールに囲まれたブータンは、経済よりも国民の幸福度を重視することでよく知られているが、この孤立した国は、数年前から暗号資産のポートフォリオを構築してきた。フォーブスは以前の記事でブータンの国有持株会社が暗号資産に数百万ドルを密かに注ぎ込んでいたことを報じていた。この投資は、国民には一切知らされていなかった。
ブータン政府は、ビットディア以外のマイニング事業者との協業も検討している模様だ。ビットディアの発表に先立ち、政府にマイニング戦略を助言したコンサルタントがフォーブスに語ったところによると、ブータンは以前、水力発電所の1つに接続する100MWの事業について問い合わせを行ったことがあるという。
内陸国のブータンの輸入貿易は、通常はガソリンや鉄鋼、米などが中心だ。しかし、同国の財務省のデータによると、2021年と2022年には数百万ドルの「プロセッシングユニット」やコンピュータ用チップが輸入品のトップに躍り出ていた。昨年、ブータンには約1億4200万ドル相当のコンピュータチップが輸入され、王国の総輸入額14億ドル(約1940億円)の約10分の1を占めていた。また、同国は2021年に5100万ドル相当のチップを輸入していた。
同国の財務省は、2022年に同国の輸入総額が急増した原因の一部が、政府の投資会社のDruk Holdings & Investmentが「特別なプロジェクトのために これらのチップに支出したことにある」と述べた。しかし、ハードウェアがどのように使用されたかについての質問には回答しなかった。