2023.09.19

まさに博物館級のフェラーリ|フェラーリ365GTB/4のプロトタイプ#10287

1960年代後半、パフォーマンスカーの世界は岐路に立たされているように思われた。ランボルギーニがP400ミウラを発表し、その革新的なミドシップエンジンデザインが、パフォーマンスカーの上流階級の未来を占め、フロントエンジンの車は人気を失い始めると考える者さえいたのである。

ミウラの成功に刺激されたフェラーリは、ランボルギーニに対抗するために、275GTB/4の後継車は何か壮大で新しいものでなければならないと考えていた。その結果ミドエンジンではなく、フロントにV型12気筒エンジンを搭載し、ピニンファリーナがデザインしたコーチワークが採用されたのである。当時、12気筒のフロントエンジンのGTカーを作るのに、フェラーリの右に出るものはいなかったし、マラネロのすぐ近くに本社を置くランボルギーニという「反逆者」たちにも負けるわけにはいかなかったのだ。



ランボルギーニミウラに対抗するスクーデリアの新型フェラーリ、その発端となったのが#10287である。一見すると、275GTB/4と365GTB/4デイトナの中間を行くような車である。しかし、この車はフェラーリの将来を占うためのデザインスタディ以上の価値のあるものであった。365GTB/4のプロトタイプは全部で6台作られたが、この車はそのうちの最初の一台であり、最も認知度が高く、最もユニークで、最も重要、さらに言えば最も望ましいものであることは間違いないだろう。

今回この非常に価値の高い車がRMサザビーズのオークションに出品されることとなった。



#10287は、275GTB/4と同じTipo596のシャーシで、鋼管製、ホイールベースは2400mm(275GTB/4と365GTB/4に共通のホイールベースレングス)である。その心臓部には、当時のフェラーリのロードカーには搭載されていなかったランプレディ・エンジンというユニークなエンジンが搭載されている。

ドライサンプ、3バルブヘッド、デュアルイグニッション、ツインスパークプラグ、ウェーバー40DCN18キャブレターを6基搭載している。ブロックは330GTのものをベースに、4380ccにボアアップされている。この全くユニークな設計のエンジンは、1967年のデイトナ24時間レースで412Pが3位となり、数々のレースで優勝し、歴史に名を残した330P4プロトタイプレーサーのエンジンと類似しているというのが特筆すべき点だ。また、これらのレーシングカーは、1気筒あたり1つのエキゾーストバルブを持つダブルインレットバルブを採用している。



フロントガラスの前のデザインは、275GTB/4と似ている。ボディワークのテールセクションの形状は、275GTB/4のブーツヒンジとフルワイドのリアクロームバンパーを利用しており、デイトナを知っている人ならすぐにわかるだろう。#10287のサイドデザインは、最も市販のデイトナを想起させる部分で、リアセクションとルーフラインはエンツォ・フェラーリが最も気に入ったとされる部分だ。ノーズとボンネットを見ると、ジャガーE-Typeとの類似性も見て取れる。


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