サイエンス

2023.05.12 14:00

大気物理学で学ぶ、あの山が「グレートスモーキー」と呼ばれる理由

グレート・スモーキー山脈国立公園の青白いスモーク(Getty Images)

山々を見ると通常そこは「スモーキー(煙がかった)」で「ブルーイッシュ(青みがかった色)」に見える。ここから大気物理学の授業が始まる。
advertisement

まず、スモーキーといってもこれはスモーク(煙)ではない。霧がかかったように見えるのは、揮発性有機化合物(VOC)というもののためだ。国立公園トラストのウェブサイトには次のように書いてある。「冷たい空気が熱帯雨林の湿気と山脈の高度と組み合わさることで、低い雲ができる理想的な環境になり、その結果、植物は湿気を帯びて幸せになります。そして幸せな植物は、酸素を供給し、VOCを放出します」。以下、松の木や切ったばかりの草の匂いを嗅いだことのある人なら、VOCに馴染みがあるでしょうと続く。ちなみに、VOCという名前は不気味に感じるが、それ自体まったく無害だ。

では、なぜ青みががっているのか? 国立公園トラストのウェブサイトはこう書いている。「針葉樹から放出される別の種類のVOCには微かに青みがかった色があり、それがブルーリッジ山脈が青みがかった色に見える理由です」。

しかし、スモーキー山脈にはもう少し物語がある。それを説明するためにはレイリー散乱について述べる必要がある。太陽光の散乱の一種で、波長と粒子の大きさに依存する。前述のVOCは一定の反応を通じて増加しエアロゾル(大気中に存在する固体または液体)と相互作用を起こす。レイリー散乱は、光の波長と較べて散乱させる粒子が比較的小さいときに起こる。当初は、VOCの粒子が小さいために、短い波長の大部分がレイリー散乱され、太陽光のうち波長の短い青色部分が散乱されて人間の目に入る。ちなみに、空が青く見える仕組みも同じ散乱による。
advertisement

しかし、マイク・ニューランドは、自身のわかりやすく書かれたブログでさらに詳しく説明している。彼は、オランダの生物学者、フリッツ・ワーモルトの先駆的研究について書いている。ワーモルトは1960年に「Blue Hazes in the Atmosphere(大気中の青い煙霧)」と題した論文をNatureで発表した。彼は、森林地帯の煙霧に特に興味を持ち、レイリー散乱に焦点を当てた。しかし、ニューランドはこういう。「彼はさらに研究を進め、森林の上にしばしばさまざまな色の煙霧の層が見られ、一番下に青、その上にグレイや茶色の層ができることを発見した。森の上に高く昇るほど粒子は大きくなる」大きい粒子では、ミー散乱が支配的プロセスとなり、波長に依存しなくなる傾向がある。白灰色の煙霧はそうやって生まれる。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事