古生物「タリーモンスター」の謎に3D画像化技術で日本の研究チームが迫る

3億年前に生息していたといわれているタリーモンスター(Getty Images)

1950年代に発見され、1966年に初めて論文が書かれたタリーモンスター(トゥリモンストゥルム、Tullimonstrum gregarium)は、約3億年前に生息していた謎の生物だ。イリノイ州のメゾンクリークの地層でのみ発見されており、1989年には州の化石に指定された。

軟体で比較的小さく(人間の手の中に収まると思われる)、突き出した目と長い吻部を持つこの生物は、知られている他のいかなる化石あるいは現存する動物群とも比較が困難であり、発見以来、古生物学者を困惑させている。

2016年、米国の研究チームはタリーモンスターは初期の脊椎動物であり、一部の解剖学的詳細が現代の円口類(ヤツメウナギ、ヌタウナギなどが属する)に似ているという仮説を提唱した。

その後、この仮説を支持する研究と退ける研究の両方がここ数年に発表され、未だに合意は得られていないが、このほど日本の研究チームが、3D画像化技術を使って決定的な答えを見つけたと発表した。

「これが脊椎動物であるか無脊椎動物であるかという謎は解けたと私たちは確信しています」と、研究当時東京大学生物科学専攻博士課程大学院生で、現在は国立科学博物館特別研究員の三上智之氏は語る。

「複数のエビデンスに基づき、タリーモンスターが脊椎動物であるという仮説を支持することは困難です」

研究チームは150以上の化石化したタリーモンスターおよびメゾンクリークの70以上のさまざまな動物の化石を調べた。約3億年前に水底に堆積した泥層には、海洋生物が炭酸塩コンクリーションの中に保存されている。コンクリーションは、何体生物がさらに腐敗するのを防いだが、残念ながら多くの場合、化石を覆っていた堆積物の重量によって潰されてしまう。

研究チームは、3Dレーザースキャナーを活用し、化石のカラーコード化された3Dマップを作った。マップでは表面に存在するわずかな不規則性が色の変化となって現れる(恐竜の足跡の研究で用いられたのと同様の手法)。タリーモンスターの吻部の観察には、X線マイクロCT(X線を使用して対象物の断面図を作ることで3Dモデルの作成が可能)も使用された。
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翻訳=高橋信夫

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