AIは過去のものに、脳細胞を利用する「オルガノイド知能」登場の日は近い

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また、脳オルガノイド搭載コンピュータシステムは、薬物治療の前臨床試験に新たな機会をもたらすだろう。生体電気を利用したインターフェースは、新薬への神経細胞の反応を示す生理学的データをリアルタイムに報告できると同時に、人間や動物を副作用の危険にさらすという倫理的課題を軽減できる。

OIには、研究とイノベーションの無限の可能性がある。しかし、進歩し続けるこの新分野では、いくつかの倫理的な問題がまだ解決されていない。今のところ脳オルガノイドが意識を持ったり、自ら「考え」たり「感じ」たりできるという証拠はないが、モデルがスケールアップしても決してそうならないとは言い切れない。意識は、私たちの理解の範疇をはるかに超えて複雑なものだ。より現実的で倫理的な脳の研究方法を開発しようとして、道徳的・倫理的な保護が必要なモデルを作ってしまうかもしれない。米スタンフォード大学の法学者ヘンリー・T・グリーリー教授が提唱したジレンマだ。脳オルガノイドのモデルが「人間らしさ」を増すにつれて、研究者は「何が人を人たらしめているのか」を定義する必要に迫られるだろう。

仮にこうした3次元脳細胞培養物が知覚を持つことがないとしても、それらが生み出す知的財産は誰に帰すのかという問題は残る。AIをめぐってすでに生じている問題だが、脳オルガノイドの場合、その製作に使われる幹細胞がドナーボランティアから提供されるという事実が倫理的な疑問を複雑にしている。幹細胞の提供者は、自分の遺伝子コードを用いて作られたものに対する権利を保持しているのだろうか。オルガノイド知能の分野は有望に思えるが、研究コーディネーター、倫理専門家、一般市民と緊密に協力しながら研究を続けていく必要がある。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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