宇宙

2023.05.03

スペースXのロケット打ち上げは影響評価に不備、環境団体が米当局提訴

米テキサス州から打ち上げ後、爆発したスペースXの宇宙船「スターシップ」と大型ロケット「スーパーヘビー」(2023年4月20日撮影、Jonathan Newton/The Washington Post via Getty Images)

起業家のイーロン・マスク率いる米SpaceX(スペースX)が4月に行った大型宇宙船「スターシップ」の打ち上げをめぐり、米連邦航空局(FAA)が周囲の環境に与える影響の評価を十分に行っていなかったのは連邦法違反にあたるとして、環境保護団体や文化財保存団体のグループが1日に提訴した。スターシップは発射から数分後、メキシコ湾の上空で爆発し、広い範囲に破片などが飛び散った。

訴えを起こしたのは米NPOの生物多様性センターや米国鳥類保護協会などのグループ。FAAが打ち上げによる環境やコミュニティーへの影響について包括的なレビューを実施せず、スペースX側に環境問題の緩和も義務づけないまま、昨年6月に打ち上げ計画を認め「重大な影響はない」とも結論づけていたのは、国家環境政策法に違反すると主張している。スペースXは今年4月、スターシップ打ち上げに必要なライセンスを付与された。

月や火星に人間を送り込むことをめざして開発されたスターシップは4月20日、テキサス州南部ボカチカにあるスペースXの宇宙基地「スターベース」から打ち上げられ、数分後に空中で爆発した(スペースXは「予定外の急速な分解」と表現している)。米魚類野生生物局によると、爆発によって鉄筋コンクリートや金属などの破片が広範囲に撒き散らされたほか、火災も発生して1万4000メートルほどのエリアが焼けたという。

原告は首都ワシントンの連邦地裁に起こした訴訟で、FAAによる認可の結果「多くの種(しゅ)にとって不可欠な生息地」を含む生物的に多様なエリアに「強烈な熱や騒音、光」を放つ打ち上げが、何度も行えるようになったと主張。被害を受ける対象には、南テキサスの先住民カリーゾ・コメクルド族の間で神聖なものとされている土地や生物も含まれるとしている。

原告によると、ボカチカ周辺では過去5年に少なくとも8回の爆発が起きているという。

スターシップのブースター「スーパーヘビー」はこれまでに開発された最も強力なロケットで、打ち上げ時には約7600トンの推力を生む。燃料には液化メタンを最大3700トン使う。

マスクは昨年、スターシップの打ち上げ費用は2〜3年の間1000万ドル(約13億8000万円)足らずになるとの見積もりを示している。

初回の打ち上げは軌道には到達できなかったが、スペースXは「今後の打ち上げに向けて貴重な情報を得られる」として成功だったとの認識を示している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事