宇宙

2023.04.26 09:45

中国の火星探査車、休眠から覚醒せず このまま「永眠」の可能性

中国の火星探査車「祝融号」の模型(Long Wei / Costfoto/Future Publishing via Getty Images)

中国の火星探査車「祝融号」の模型(Long Wei / Costfoto/Future Publishing via Getty Images)

中国初の火星探査ミッションの総設計師、張栄橋は25日、探査車「祝融号」が、火星の厳しい冬と激しい砂嵐に耐えた後、休眠状態のまま停止していることを認めた。

野心的な宇宙プログラムを推進する中国の火星探査機「天問1号」ミッションの一部である祝融号は、火星上での1年間におよぶ活動の後、太陽光が減少し発電能力が低下する冬の間は計画通り休眠モードに突入。昨年12月に活動を再開する予定だったが、中国の宇宙機関、国家航天局は祝融号の状況について数カ月間、沈黙を続けていた。

中国国営テレビなどが伝えた張の発言によると、予想以上の砂塵が堆積したことにより太陽光発電が妨げられ、再起動に十分な電力を生成できない状態とみられる。砂塵の堆積が想定を大きく上回る場合、いくら太陽光を浴びても探査車は復活できず、「永遠に」活動を停止することになるという。

一方で張は、祝融号の活動について、ミッション当初の目標である3カ月を大幅に超え、1年間にわたって火星の地表を探査した点を称賛した。

中国の火の神にちなんで名付けられた祝融号をめぐっては、昨年12月に火星の天候が改善したにもかかわらず活動を再開した様子がないことから、厳しい火星の冬を越せなかったとの臆測が拡大。今年2月に米航空宇宙局(NASA)の火星探査機マーズ・リコネサンス・オービターが撮影した画像で、9月から移動していないと判明したことで、臆測はさらに勢いを増していた。

火星への探査車投入に成功したた国は、米国と中国のみ。火星では砂嵐が地表に届く太陽光を遮り、発電に必要なソーラーパネルを覆ってしまうため、探査車の活動には高度な技術が必要となる。

中国国営メディアが国家航天局の発表として伝えたところによると、天問1号に搭載された機器が収集した科学データは1800ギガバイトに上る。国営メディアの環球時報は、このデータから「いくつかの発見」があったと報じたが、詳細は明らかにしていない。中国中央電視台(CGTN)は張の発言として、探査結果は5月から世界各国と共有する予定だと報じた。

中国は宇宙大国を目指しており、火星探査の他、宇宙探査の「前線基地」を月面に建設する計画を進めている。また、国際宇宙ステーション(ISS)に対抗して独自の宇宙ステーションを建設しており、宇宙における軍事力も強化している。中国の月探査計画の総設計師である呉偉仁はCGTNに対し、「2030年までに」中国人を月に送ることが可能だと説明。今後の有人・無人の宇宙探査や着陸ミッションに向け、宇宙活動でのインターネット利用などを可能とする月衛星ネットワークの構築に取り組んでいるとも話した。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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