国内

2023.04.28

月面着陸に挑んだispace、CEOが振り返る13年の歩み

ispace代表締役CEO&Founderの袴田武史(撮影=曽川拓哉)

日本発の宇宙スタートアップ企業「ispace(アイスペース)」が挑んだ、民間企業として初の月面着陸。2022年12月11日に打ち上げられた月面着陸船は、日本時間4月26日未明に着陸体制に入ったが、その後通信が途絶えた。詳しい原因を解明すべく、解析を進めているという。

今回の挑戦に至るまでには、長く険しい道のりを歩んできた。ispaceの前身は、合同会社「ホワイトレーベルスペース・ジャパン」。オランダの「ホワイトレーベルスペース」の日本支社として2010年に設立され、日欧チームで、月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」の優勝を目指していた。日本はローバー(月面探査車)を、欧州はランダー(月着陸船)を製作するという役割分担をしていた。

しかし2013年、欧州のチームがレースから脱退することになり、ホワイトレーベルスペース・ジャパンは組織変更で「ispace」を設立。「HAKUTO」というチーム名でGoogle Lunar XPRIZEに独自参加を続けた。ただ、その後も別の協業チームの離脱が起きるなど苦戦を強いられ、ispaceもレース中止に追い込まれた。
 
そうしたなかでも2017年には大型の資金調達に成功し、今年4月には東証グロース市場へ上場した。ispace代表締役CEO&Founderの袴田武史(はかまだ・たけし)に、
 
1. 創業まで(〜2010年9月)
2. 創業から5年目まで(2010年9月〜2015年8月)
3. 6年目からIPOまで(2015年9月〜2023年4月)
 
各期間のターニングポイントを聞いた。
 

ターニングポイント1 結婚式で月面探査レースを知る

幼い頃から宇宙への憧れを抱いてきた袴田は、日本とアメリカの大学で航空宇宙工学を学んだ。卒業後は、外資系のコンサル企業に就職したが、そこでの勤務が後のスタートアップ経営にも影響を与えたという。
 
「『コンサルで経営の勉強をしたんですか?』とよく聞かれますが、それよりはスタートアップを経営するためのガッツを得たと思います。コンサルは小さな会社で、僕が8人目くらいの社員でした。顧客のコスト削減が仕事で、削減額の何パーセントかが自分の給料になるという環境だったんです」
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文=露原直人 撮影=曽川拓哉

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