気候変動のヒーローにも悪役にもなる「細菌」

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説得力のあるドラマには、ヒーローと悪役が必要だとよく言われる。次々と明らかになる気候危機は、現実のドラマであり、そこには両方の役割を演じる人間の役者たちが関わっている。しかし、気候物語の「キャスト」を占める重要なヒーローと悪役の中には、顕微鏡での観察が必要なものもある。それは細菌だ。

この小さな「役者」たちは、廃棄物処理の流れの中で繁殖して悪役を演じることが多い。強力な温室効果ガスであるメタンを生成するからだ。専門的には「メタン生成菌(methanogen)」と呼ばれている。人間の映画俳優の中には、ヒーローと悪役をうまく演じ分ける人たちがいる。適切な脚本さえあれば「メタンメーカー」たちはヒーローも演じることができる。

重要な温室効果ガスであるメタン

メタン排出が問題になのは、時間軸を考慮に入れると、この気体が、二酸化炭素の25倍から120倍の地球温暖化効果を持つからだ。米国環境保護庁(EPA)の推定によると、メタンは米国における人間に由来する温室効果ガス問題の11%を占めている。メタン排出の38%は化石燃料産業と直接関連し、主として、化石エネルギーの採鉱、掘削および配給の処理過程における漏洩による。

しかし、ほかにも多くの問題になるメタン排出が、私たちの食品廃棄物、動物の糞、下水などに「メタンメーカー」が住むことによって起きている。そこに利用できる酸素があれば、ほとんどの細菌は私たち人間と同じようにそれを使用するが、周囲に十分な酸素がないと「通性嫌気性菌」という「ダークサイド(邪悪な側面)」に切り替わり、有機物というエサを分解する際にメタンを発生する。たとえば、食品廃棄物が埋め立てられたときにそれは起きる。その状況下でメタン生成菌は「悪事」を働き、EPAの推定によると、米国における人間由来メタン排出の17%を生成する。別の9%は動物飼育産業で糞を山積みにしたり池に貯めるなど酸素の供給が不足するかたちで蓄積されたときに起きる。
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翻訳=高橋信夫

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