2023.05.02

気候変動への対応で航空運賃は22%上昇か

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航空業界は気候変動対策の目標を達成するために脱炭素化の準備をしているが、どのような方法でそれを実現するのか、また、最終的に運用の変更で発生する費用を誰が負担するのかなど、いくつか問題になっている。

航空業界の二酸化炭素(CO2)排出量を削減するための重要な要素の1つは、飛行機の運航方法を変えること、特に持続可能な航空燃料の使用だ。国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務局長はこのほど開催された米ブルームバーグのカンファレンスで、持続可能な航空燃料の開発費用を誰が負担するかはまだ明確になっていないと語った。

ウォルシュは持続可能な航空燃料は最大65%のCO2排出削減に役立つと語った。だがその費用は「消費者が負担しなければならず、それを避けることはできない」とウォルシュは予測している。

世界の気温上昇を抑制するという現在の目標を達成するためには、業界は迅速に脱炭素化を進める必要がある。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の報告によると、旅行業界は世界の温室効果ガスの8〜11%を排出しており、その多くは交通機関によるもので、大半が航空機から排出されている。航空業界は2050年までに排出量を正味ゼロにするという大きな目標を達成するために重圧を受けている。

航空業界が排出量を減らす方法は他にもいくつかある。便数の削減や路線編成の改善などだ。加えて、航空機のスピードは排出量を根本的に減らすことができ、多くの航空会社でパイロットは経費削減のためにスピードを落とすよう求められている(これも排出量削減の目標達成に役立つ)。

国際クリーン輸送協議会は、航空業界の脱炭素化には1兆ドル(約136兆円)もの費用がかかり、その費用を賄うために2050年までに航空券の価格を22%も上げなければならないと予測している。

ジェットエンジンを製造するRolls-Royce Holdings(ロールス・ロイス・ホールディングス)のサステナビリティ責任者のレイチェル・エバラードは、水素燃料は一般的に最良の選択肢と考えられているが、現在は利用できる量が十分ではなく、政府やエネルギーインフラに携わっているべての人が関与する統一された問題対処の計画が必要だと述べた。

脱炭素化は航空業界が現在受けている圧力の1つにすぎず、状況は一向に好転しないようだ。昨夏、世界中の旅行者が新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる遅延や運航中止、ストライキを経験したが、今夏も同様に大変な事態になりそうだ。

パイロットや航空管制官が不足し、抑圧されていた膨大な旅行需要から航空運賃は高騰している。また、欧州や英国では入国や生体情報にかかる手数料の徴収など新たな出入国管理が実施されている。

もちろん、航空会社がより持続可能な手法を導入するスピードを上げるよう駆り立てることができるのは旅行者だ。米旅行雑誌コンデナスト・トラベラーの『A to Z on How To Travel Sustainably』などのガイドは、カーボンオフセットの利用など、より持続可能な選択肢を探している旅行者が直面している課題に対処する方法を案内している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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