メタンイーター細菌の持つ2種類のスーパーパワー
しかし最近この話に予期せぬ展開が起こり、新たなキャストが登場した。メタンを生成せず、主要なエネルギー源としてメタンを消費するという細菌だ! この「メタンを消費する細菌(メタンイーター)」は、メタン資化性菌(metanotroph)と呼ばれ、海底のメタン湧出口近くに住む古代生物に関連している。一部のメタンイーターは、空気中の窒素を捕獲し、自分たちだけでなく植物や動物にとっても利用可能な形に変える希少な能力を持っている。Windfall Bioという会社は、2種類の微生物の「スーパーパワー」を利用する方法を見つけようとしている。たとえば、堆肥の山の上にこれらの微生物からなる層があると、一時的に発生したメタンを捕らえて、完成した堆肥の窒素含有量を最大2%増加させる。あるいは、小さなガラスビーズのようなものをこれらの細菌で包み、 メタンを含む気流を細菌がガスを捕らえることができる速度で流してやると、細菌は成長すると同時に数を増やすにつれ窒素を蓄積していく。ビーズの細菌を定期的に洗い落として乾燥させれば、窒素に富んだ肥料(窒素濃度最大15%)の原料になる。固定された窒素はアミノ酸などの形式であり、養分がゆっくりと地中に放出される「スリーリリース」肥料になるため、これも問題ある温室効果ガスである亜酸化窒素を発生しにくい。この細菌性肥料にはカリウムとリンという植物の必須栄養素も含まれている。このシステムが最もうまく働くのは、気流内に十分なメタンがある場合だが、わずか数ppmの濃度であっても「メタンイーター」の成長を支援できる。
このアプローチは、規模その他の経済的制約によって、本格的な嫌気性消化装置やRNG回収システムの導入が困難な場合に最適だ。考えられる利用例としては、たとえば「肥溜めカバー」の下に溜めただけで、燃やされたり、地域の暖房用に使われている養豚場の肥溜めがある。しかし、どのような設定であれ、このテクノロジーの導入を後押しするバリュー・ストリームが2つある。メタン排出を防ぐための炭素クレジットと、炭素排出量の少ない肥料の販売だ。
目に見えないメタンメーカーとメタンイーターがヒーロー役を演じる機会を得られる方法は複数ある。そしてそれは人類の気候変動への対応を手助けをし、物語をハッピーエンドにする可能性に寄与するだろう。
(forbes.com 原文)