宇宙服や深宇宙探査機への搭載も?
せりか:IDDKのMID技術を通じて、社会にどのように貢献していきたいですか。上野さん:私たちの生活は、顕微観察技術に支えられている場面が多くあります。例えば、飲み水の浄水に微生物を使い、その管理に顕微鏡が用いられています。何か製品を製造するときも、品質チェックに顕微鏡を使っている場合もあります。私たちの生活のありとああらゆる場面のバックグラウンドで顕微鏡技術が使われているんですよ。
それがMIDのようにチップで観察できる新しい観察形態が登場したことにより、大型の装置がなくても顕微観察ができるようになりました。今までの制約がなくなって、顕微観察がもっともっと世の中で広く使えるようになっていくと思いますね。
その一例が宇宙でのバイオ実験です。従来の顕微鏡は大型だったため、いくつもISSに輸送するのは難しいと考えられていましたが、MIDなら例えば宇宙服の指先に付けていただいて、ピッと触った部分を顕微観察することもできますよね。探査機に積んでもらえれば、将来的には惑星や小惑星に生息している生き物を観察することもできるかもしれませんね!
せりか:宇宙服にMIDを付けて船外活動や月面探査ができれば、新しい発見に繋がりそうですね。
地上でもぜひ使ってみたいです。最後に今後の意気込みを聞かせてください!
上野さん:やはり、まずは宇宙バイオ実験を成立させること、そして「こんな実験が宇宙でできるんだよ」ということを世界に広げていきたいです。宇宙ステーションだけでなく、人工衛星も使うことで、宇宙のバイオ実験を世界中の人々ができるようにしていきたいですね。
この宇宙バイオ実験は、宇宙産業への貢献にもつながると思っています。今までの宇宙利用は大きく分けると、衛星を使った通信か、衛星を使った探査や観測のどちらかでした。宇宙バイオ実験が頻繁にできるようになると、新しい宇宙の利用方法が生まれ、宇宙産業がもう一歩広くなるのではないかと思います。
特にバイオ実験のなかには3日間で成果を出せるものもあり、衛星のコストメリットを出しやすくなります。そうすれば宇宙をもっと使えるようになりますし、宇宙産業も大きくなっていくでしょう。
せりか:上野さん、池田さん、ありがとうございました!
せりか宇宙飛行士との対談シリーズ第18弾のゲストは、IDDKの上野宗一郎さんと池田わたるさんでした。
次回は東京大学にて教鞭をふるい、太陽系の宇宙資源の探査・研究を行う宮本英昭教授をお迎えし、宇宙資源やその研究が人類の暮らしにもたらす恩恵についてお話しをうかがいます。お楽しみに!