2023.04.26 14:30

「そしてオリエント急行もなくなった」ブレグジットの余波は英鉄道旅にも

オリエント急行とは

1883年に運行を開始した元祖オリエント急行は欧州初の大陸横断特急で、当初はパリ─イスタンブールの2700キロメートル超を結び、ミュンヘンやウィーン、ブダペスト、ブカレストなどで停車していた。第一次世界大戦中に一時運行が休止されたあと、1919年、フランス北部の港町カレーとパリからローザンヌへ、そしてアルプスのシンプロン峠を通ってミラノ、ベニス、ザグレブ、ベオグラード、ソフィアに向かう新しいルートで再開された。クリスティの1934年の作品『オリエント急行の殺人』は、オリエント急行が雪で5日間立ち往生した出来事に着想を得ている。

第二次世界大戦が起きると再び運行は中断され、戦後の1947年に再開された。その後、1977年にオリジナルのオリエント急行は廃止されたが、米国生まれの実業家ジェームズ・シャーウッドがオークションで落札した1929年製の寝台車などを再利用して、1982年に現代版オリエント急行の運行を開始した。このときに出発地がロンドンになった。

乗客はロンドンのビクトリア駅でアールデコの装飾が施されたブリティッシュ・プルマンに乗車し、南下してフォークストンまで行く。そこでいったんバスに乗り換え、フェリーで英仏海峡を渡って対岸のカレーに向かう。1930年代に英国からパリ発のオリエント急行に乗った人たちと同じ列車と船の旅だ。フランスに到着すると、ミッドナイトブルーの由緒ある大陸列車に乗車し、車内で豪華なディナーを堪能できる。

来年春以降、現代版オリエント急行の乗客もパリから出発し、それぞれに個性のある1920〜1930年代製の客車17両でベニスやフィレンツェ、ウィーンに向かうことになる。今年の夏には、大理石のバスルームを備えたスイート8室が、新たな客室カテゴリーとして追加される予定だ。

出発地の変更にさぞかしがっかりしている人もいるだろうが、旅行の専門家たちはオリエント急行が贅(ぜい)を尽くした鉄道の旅を体験させてくれるという点は変わらないとも強調している。

インターナショナル・レイルウェイのハーディーは「この路線ではベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスが最大のスターですし、今後もそうでしょう」と断言する。「歴史ある列車に揺られながら夜を越えていく旅は、出発地がどこであっても、豪華な旅をしたい人たちにとって絶対に一度は試さなくてはいけない体験であり続けるはずです」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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