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鉄道輸送が全盛期を迎えていた時代、アガサ・クリスティーは欧州大陸を横断する夜行列車を舞台とした『オリエント急行殺人事件』を執筆した。しかし列車人気の衰えによりこうした路線の多くが10年ほど前に運行を終了し、優雅さに欠くものの格安な航空会社やバスにとってかわられた。

だが、こうした昔ながらの列車が今、復活しつつある。オーストリア連邦鉄道とスイス連邦鉄道(SBB)は数年前から、新たな寝台列車の運行を率先して進めてきた。さらにヨーロピアン・スリーパーとミッドナイト・トレインズの民間企業2社は最近、欧州で今後数年以内に新たな寝台列車を導入すると発表した。

こうした動きの背景には、気候変動と温室効果ガスの排出量に関する世間の懸念がある。欧州各国の政府も行動に出ており、フランスは4月、列車で2時間半以内に行ける目的地への国内線フライトの提供を禁じた。それよりも長い距離の移動でも、夜行列車を利用することで輸送による温室効果ガス排出量を削減できると考えられている。

都市間を結ぶ夜行列車の旅のメリットとしては他にも、都心から都心へと効率的に移動できることがある。出発の数時間前に空港に向かう必要性や、空港への往復タクシー料金や公共交通機関の利用料がなくなり、列車内に宿泊するためホテル料金もかからない。

ヨーロピアン・スリーパーは2022年4月の運行開始を目指している。最初の路線はブリュッセル発プラハ行きで、途中アムステルダムやベルリン、ドレスデンなどに停車する。

フランスのミッドナイト・トレインズは、パリ発の夜行列車を2024年までに運行開始すると発表した。ローマやミラノ、エジンバラ、バルセロナなど、パリから約800~1500キロ離れた欧州12都市に運行する予定だ。同社は「線路上のホテル」をうたい、車内ではレストランやバー、コンシェルジュサービス、豪華な部屋が用意される。

ミッドナイト・トレインズの売りはサービスと快適さだが、今も高級列車サービスとして運行しているオリエント急行とは一線を画すものだ。ミッドナイト・トレインズの「ホテル式」客室ではプライバシーと快適さが確保され、専用客室、ダブルの客室、家族用の大きな客室から選ぶことができる。各客室は専用バスルームを備え、ホテル並みの寝具やオンデマンドの映画を用意。列車内にはレストランやバーがあるほか、ルームサービスも利用可能だ。

新たな夜行列車の運行開始で注目されがちなのは民間企業だが、数年前には国鉄各社も脚光を浴びた。オーストリア連邦鉄道は「ナイトジェット」のブランド名で、ケルン発ウィーン行きやインスブルック発アムステルダム行き、ミュンヘン発ミラノ行き、ウィーン発ハンブルク行きなどの夜行列車を運行している。ナイトジェットには仏独の国鉄やスイスのSBBも参加し、チューリヒ発ベルリン行きやチューリヒ発ハノーバー行きの夜行列車が利用可能となっている。

より速く、より環境に優しいサービスを目指す欧州の夜行列車は、今後2年で欧州の旅を様変わりさせるかもしれない。

編集=遠藤宗生

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