Googleやモルガン・スタンレーなど国内外の企業で、長年人材と組織の開発を担当。人的資本経営に不可欠な心理的安全性についての自著「心理的安全性 最強の教科書」も持つピョートル氏が考える経営と人事の本質とは何か━━。核心に迫った。
人は資本ではない。個人を尊重した本質的な経営へ
人的資本経営とは何か。実現のために何をすればよいのか━━。本トークセッション・シリーズのテーマでもあるこの問いに、ピョートル氏は根本的な疑問を呈す。「皆さんは人的資本になりたいですか?人は資本ではないし、どうしても自分が資本だと見られていると思うと、違和感があります。私は人間で、自分の夢も価値観もあって、感情もある。それを通じて、会社というコミュニティの中で社会的価値を生み出せる存在であるべきです。
ヒューマンリソース、ヒューマンキャピタルという言葉もありますが、社員をコストやピースの一つとしてではなく『人』として捉えること、それが人事担当者に持ってもらいたい視点です」(ピョートル氏)
言語学者、心理学者としての一面も持つピョートル氏。人材はコストではなく資本だという人的資本の概念は、経営に大きな転換点をもたらすものであり、必ずキャッチアップしなければならないものだが、その言葉を表面的に受け取るだけでは駄目だと警鐘を鳴らす。
「会社の存在意義、社会的価値とは何か。その価値は誰が出していくことになるのか。その『誰』の部分を掘り下げると、やはり人です。生き方改革を目指す個人と、経営改革を目指す法人を、ギブ・アンド・ギブの関係にしていくことが本質です。根本的に皆さんが腹を割って1対1で話せば、多くの組織問題は解決できるのです。
経営学としての人的資本の考え方を否定したいわけではないですが、言葉の意味だけにとらわれず本当の意味で、人のパフォーマンスを上げることに向き合わなければならないと思います」(ピョートル氏)
それに対し堀尾も、「人的資本というものにおいて、日本人は思考停止になりすぎている面があります」と同調。「資本というものがどういうものなのかというのをしっかりと客観視して、その言葉を口にするかどうかも判断しなくてはならない。でなければ、大事な人がおざなりになるという感覚が強くあります」と続けた。