政府は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定し、今年に入ってから毎月の電気・ガス料金の値引きを開始しているが、4月からは大手電力会社が料金の値上げを実施しており、その効果はあまり見られない状況です。
帝国データバンクが中小企業を対象に電気料金の値上げの影響についてアンケートを行ったところ、厳しい実態が浮き彫りになりました。
まず、電気料金の総額が1年前に比べてどう変化したかに対して、約94%の企業が増加したと回答。増加した割合で最も多かったのが20~40%未満で、平均は39.4%の増加となっています。
これは、2022年12月に同様の調査をしたときに比べても増えており、ますます厳しい状況になっていることが伺えます。
こうした状況に対して、大手電力会社から新電力会社に乗り換えたものの、それでも料金がかなり上昇していると回答する企業が多く、電灯をLED化したりエアコンを入れ替えたりして使用量を減らした結果、増加分を抑えられたと回答する企業もありました。
電気料金の増加分を販売価格やサービス料金にどの程度添加できるかという問いには、「全く価格転嫁できていない」と回答した企業が57.2%にも上りました。一方で価格転嫁している企業でも2割未満が20.7%でもっとも多く、価格転嫁率の平均は14.9%となりました。
この結果は2022年12月の調査に比べれば、だいぶ価格転嫁するようになっているものの、企業からは「原材料の転嫁が精一杯で、電気代まで価格転嫁したら客足が遠のきそう」や「競合が少なければ価格転嫁できるが、取引先の多い大手や新規開拓では申し入れにくい」という声が多く、価格転嫁したくてもできないジレンマに陥っていることが伺えます。
一方で、「客先と電気料金上昇の実績データをもとに交渉して、価格転嫁を勝ち取った」という企業もあるようで、わずかながらでも価格転嫁実現に向けて動いているようです。業種や業態によって対応はさまざまでしょうが、経営が傾く前に打開策を見出していかなければならず、難しい判断を突きつけられている状況のようです。
出典:帝国データバンク「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート(2023年4月)」より