経営・戦略

2023.04.22 11:00

お金の活かし方はこう変わる。社会貢献型「投資思考」を広めたカード

丸井グループ 代表取締役社長の青井 浩

丸井グループ 代表取締役社長の青井 浩

2023年、世界はどのように変わっていくのか。コロナ禍は沈静化を迎えるも、地政学的不安は増し、経済は先行きが不透明まままだ。Forbes JAPAN2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1「36人」に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融など100の答えが今年の100の変化を示す。

ここでは、小売りとクレジットカードを組み合わせ成長してきた丸井に注目。同社は新しい金融の道を開拓し、カードを起点に拡大するサービス群は、顧客だけでなく多くの人を巻き込む新しいフィンテックとなっている。


「先進国ではフィンテックは安定期に入ったという見方があるが、日本のフィンテックはこれからが本番になる。Eコマースや金融業など新旧プレイヤーがフィンテックという山に競いながら登っていく。この先5年、10年が最も成長期になるのではないでしょうか」

丸井グループ代表取締役社長・青井浩は、フィンテックの未来をこう予想する。

熾烈な競争が展開するなか、丸井グループ(以下、丸井G)の立ち位置は、創業91年かけて築いた小売りと金融のプラットフォームに、テクノロジーを採り入れてフィンテック化していく独自路線だという。

2021年度の取扱高は小売りが約2452億円に対し、フィンテックが約3兆2005億円と、全体の9割を超えている。成長の原動力になっているのが、小売りで築いた「クレジットカード700万人超の顧客層」だ。顧客のニーズに対応しながら変化を遂げてきた。それが丸井Gの独自性という強みを生んだ。その丸井Gらしさが反映されている事業が、2016年に始動した「未来投資」だろう。

1960年に日本初のクレジットカードを発行。90年代には「赤いカードのマルイ」の愛称で顧客を伸ばす。2006年にエポスカードへと進化し、21年には非接触決済機能を搭載。現在は買い物はもちろん、多様なコラボレーションカードや、光熱費決済、小口投資などカードを起点としたライフスタイルの基盤に。

1960年に日本初のクレジットカードを発行。90年代には「赤いカードのマルイ」の愛称で顧客を伸ばす。2006年にエポスカードへと進化し、21年には非接触決済機能を搭載。現在は買い物はもちろん、多様なコラボレーションカードや、光熱費決済、小口投資などカードを起点としたライフスタイルの基盤に。

カードを起点に広がるサービス

丸井Gは従来の「小売り×金融」のシナジーに、「未来投資」をプラスした「三位一体」のビジネスモデルを打ち出し、「社会に対していいインパクトを起こす企業」としての成長を宣言。そのビジョンを軸にした事業が、「将来世代との協業」と呼ばれる未来投資になる。2050年の世界で主役となる「将来世代」を見据えた投資を図るのが目的だ。

丸井はこれまで小売りとクレジットカードという信用を土台としたビジネスモデルで成長を続けてきた。2020年の「共創経営」宣言を機に、小売り×フィンテック×共創投資という3つの核の三位一体モデルへ転換。培ってきた顧客、テクノロジー、スタートアップ等への投資や新規事業の組み合わせだ。それぞれがからみ合い生まれるシナジーがこれからの日本のフィンテックの手本になる。

投資先は、ウエルビーイングやサステナビリティ、D2Cに特化したスタートアップ企業などだが、そうした企業と事業を協業し、顧客サービスにも落とし込んだ点に特徴がある。

2年前に、全社横断で担い手を集めるチームを発足し、現在は約200人体制で協業を加速している。22年度第2四半期までの累計投資額は234億円、内部収益率は18%に上る。

未来投資の丸井Gらしい特長のひとつが、顧客に新しいお金の活かし方として、広い選択肢を提供したことだ。

例えば、22年に、エポスカード会員の社会貢献と資金形成の両立を実現するデジタル社債を発行した。ブロックチェーン技術の仕組みを利用することで、エポスカード会員に特定して直接発行が可能になった。募集額1億円に対して約20億円を集めた。これを協業先の五常・アンド・カンパニーとクラウドクレジットを通じて、途上国の約33000人に貸し付けられた。マイクロファイナンスに投資家としてエポスカードの会員を参加させたのである。

「お客さまに、私たちが投資・協業している企業に投資して一緒にその先の人々の応援に参加していただく。自分たちがこうなったらいいなという社会を一緒につくっていきたいのです」

それが創業以来の「お客さまと一緒に信用をつくる」という丸井Gの哲学だと、青井は言う。
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文=中沢弘子 写真=ヤン・ブース

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