スタートアップ

2023.05.04 17:00

「包摂的な資本主義」最前線!インパクトスタートアップ元年、その先へ

インパクトスタートアップ

米『Forbes』がコロナ禍以降、提唱する「インクルーシブ・キャピタリズム(包摂的な資本主義)」。その新しい主役、インパクトスタートアップの現在地とは。


2022年10月、世界のインパクト投資家が集う国際会議、GIIN Investor Forum2022が開催された。GLINインパクトキャピタル・代表パートナーの中村将人は次のように話す。「先進国の社会課題解決を標榜し、通常の投資と同水準の金銭的リターンを求めるインパクト投資家が急増し、存在感があったのが特徴的だ。米ウエリントン・マネジメント、米ベインキャピタル、米KKRなどがスポンサーにも並んだ。彼らは、環境問題をはじめ、先進国の格差拡大、人種・男女格差、メンタル問題、生物多様性、高齢化社会が抱える問題が投資対象だ。インパクト投資自体が先進国の課題解決のために広まっている」

また、時を同じくして、22年10月、東京にて、「社会課題の解決」と「持続可能な成長」を両立し、ポジティブな影響を社会に与えるインパクトスタートアップによる「インパクトスタートアップ協会(ISA)」が設立された。クラウドファンディングのREADYFOR・CEOの米良はるかをはじめ、プログラミング教育のライフイズテックCEOの水野雄介、保育施設向けシステム開発のユニファCFOの星直人が代表幹事を務める。READYFOR、ライフイズテック、ユニファ、そして主に知的障害のある作家のアートライセンスを軸にビジネスを手がけるヘラルボニー、新興国で低所得者層向けのマイクロファイナンス(小口融資)を手がける五常・アンド・カンパニーの5社が発起人・幹事社を務めている。

同協会は、23社で設立。環境・エネルギー、医療・福祉、教育・子育て、食・農業、金融包摂などの幅広い領域のスタートアップが集う。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2023」1位で医療サービスを手がけるファストドクターや、同3位で太陽光や風力など再生可能エネルギー開発を手がける自然電力なども参画。また、23年1月からは、「同ランキング2019」1位で宇宙ごみ(デブリ)除去のアストロスケールも幹事社になる。「反響は大きく、100程度の企業や自治体から正会員の申し込みがあった」(米良)。この10月に設立された協会の活動の成果が早くも出たのが政策提言だ。
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文=山本智之 コラージュ=アキル・ダカライ

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