さらに、同協会のヘラルボニー副社長の松田文登は「僕らは岩手のスタートアップだが、地方には社会課題だらけという現状があるからこそ『地方スタートアップの活性化』が重要だ。地方には社会課題解決を目指すスタートアップが多く、社会性と経済性の両輪を追うインパクトスタートアップという言葉が広がり、エコシステムが構築されることで、活性化にもつながる。そして挑戦する起業家も増えるといういい循環が生まれるだろう」と強調する。
政府は1月、「スタートアップ育成5カ年計画」内で検討していた、インパクトスタートアップを支援する認証制度を23年度に設けることを発表。経済産業省のスタートアップ支援制度に新たな枠をつくるなど、協会の提言が実現する動きもすでに出てきている。
「インパクト・エコノミー」へ加速する動き
「2022年は、日本の経済界に『インパクト投資』が組み込まれた一年だった」と話すのは、社会変革推進財団(SI IF)のインパクトオフィサー、小笠原由佳だ。21年11月には、インパクト金融の加速に向け、メガバンクや運用大手、地方銀行など21社による「インパクト志向金融宣言」が公表された(22年12月時点で43社に増加)。22年6月には、政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)でも「社会的インパクト投資」に言及され、同じく同月、経団連が報告書「インパクト指標を活用し、パーパス起点の対話を促進する」を公表。金融庁でも22年10月に「インパクト投資等に関する検討会」が設置された。日本のインパクト投資残高(20年)は前年比2.5倍の1兆3204億円。23年1月、インパクト志向金融宣言が発表したインパクト投融資残高は約3兆8500億円まで増加している。経済同友会の有志でも23年1月、アフリカへのインパクト投資推進に向けて、ファンド運営会社and Capitalを設立。24年に100〜150億円の資金運用を目指す。同社代表取締役CEOも務めるシブサワ・アンド・カンパニー代表取締役の渋澤健は「インパクト・エコノミーへのレバレッジポイントは、リスク、リターンに加え、インパクトという3次元の評価尺度をもつ『資金の出し手』。いまは間違いなく、メインストリームへの過渡期だ」と話す。