市場規模10兆ドルの「グリーン水素」水素革命は産業用車両から始まる

Courtesy of PlugPower

「プラグパワーは、業界のパズルを埋めるピースをもっている」と話すのは投資会社コーウェンで株式調査アナリストを務めるジェフリー・オズボーンだ。「(プラグパワーは)必要要素をすべてコントロールし、それをやり遂げるための資金ももっています。今後の課題は、グリーン水素プラントを相互につなげ、パートナーと新たなグリーンエネルギーを生み出していくことですが、それには時間が必要です」
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マーシュとプラグパワーにとって追い風になりそうなのは、22年8月に米バイデン政権が成立させた「インフレ抑制法(IRA法)」だ。EVや、国内のバッテリー生産、風力・太陽光発電など、CO2排出の削減に向けた手厚い優遇措置で知られるこの新法には、グリーン水素に対する初の税優遇措置が盛り込まれ、水素燃料の生産者は、1kgあたり最大3ドルの税額控除を受けられる。

「この法律が導入される前に市場に参入したプラグパワーは、IRA法のおかげで利益を上乗せできます」(オズボーン)

自動車業界がこれまで水素自動車の商用化に取り組んできたのとは対照的に、マーシュは初期段階では輸送分野をターゲットにせず、その代わり、産業分野に力を注いでいる。この領域は、「さほどエキサイティングなものではない」と彼は言うが、大気汚染の主な原因となる。
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プラグパワーの水素のほぼ全量は、自動車ではなく、据え置き型の発電機や、電動フォークリフト向けの燃料や農業、“グリーン”な鉄鋼などに使われる予定だ。マーシュによると、鉄鋼やその他の産業用途から排出されるCO2の総量は、世界のCO2排出量の約26%を占めている。

さらに、モビリティ分野が26%を占めるという。物流トラックが20年代の終わりに近づくにつれ、水素燃料の有力な導入先になるとも彼は考えており、プラグパワーは仏自動車メーカー大手ルノーと燃料電池式の配送バンの開発を進めている。

マーシュの考えに異議を唱える前出のマーティンや、米コーネル大学で生態学・環境生物学を専門とするロバート・ホワース教授らは、グリーン水素が最も力を発揮するのは、農業用のアンモニアを生成する際に用いられるCO2排出が多いメタン由来の水素を置き換えることだと考えている。

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「地球上の人口の約80%は合成窒素肥料のおかげで生きており、重要だ」とホワース教授は語る。

「この肥料を最もCO2排出が少ないやり方で製造できるのがグリーン水素であり、化石燃料由来のグレーな水素や、石炭由来の『Brown Hydrogen(ブラウン水素)』よりもはるかに優れているのです」
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文=アラン・オンズマン 写真=フランコ・ボクト 翻訳=上田裕資

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