ところが、人間の体と免疫系は時として、すぐには認識できないあらゆるものに反応してしまう。花粉やその他のアレルゲンなど、体にとって必ずしも危険ではないものも含まれる。これがアレルギー反応で、ジフェンヒドラミンにはこうした症状を和らげる効果がある。
しかし、多くの医薬品と同じくジフェンヒドラミンにも副作用や潜在的な危険性がある。ベナドリルのパッケージには、めまいや眠気を催す作用があるため服用後は重機の操作を避けるよう警告が記されている。規定の服用量を守っていても、この警告は有効だ。
推奨服用量を超えて摂取した場合は、さらに悪いことが起こり得る。抗ヒスタミン薬は血液脳関門を通過できる。大量に服用すると、ヒスタミン以外の受容体に加え、心臓が拍動し続けるのに必要なナトリウムチャネルやカリウムチャネルをも阻害する恐れがある。過剰摂取によって、錯乱、尿閉、頻脈、目のかすみ、口の渇き、イライラ、幻覚、不整脈などが生じる。ジフェンヒドラミンを1グラム以上摂取すると、せん妄、精神症、てんかん発作、昏睡などを引き起こし、死に至ることもある。
そう、ジフェンヒドラミンの過剰摂取で、幻覚が現れることがあるのだ。本当は見えてはいけないもので、何かが間違っているという兆候であり、より悪いことが起こる前兆でもある。幻覚を見るようになってから夢がすべて叶ったとか、キャリア目標を達成できたとか、結婚して幸せに暮らしたという話はあまり聞かない。
ベナドリル・チャレンジがいつまでSNS上で拡散され続けるかはわからないが、SNSに流れる情報に盲目的に従うのは悪いアイデア、それも実に悪いアイデアだという何よりの証拠といえるだろう。
(forbes.com 原文)