教育

2023.05.03

教育の選択肢を広げる 軽井沢の国際高ISAKから吹く新しい風

(C)UWC ISAK

小林:1年生は、自分がやりたいことは何なのか、自分は何者でどのようなことを得意としているのか、好きなことと得意なことの接点はどこにあるのかを、1年かけて探ります。

2年生、3年生では、国際バカロレアのCAS(クリエイティビティ・アクティビティ・サービス)という課外活動を通じて、日本や自分の母国の社会問題や環境問題に挑むさまざまなプロジェクトを立ち上げます。

アウトドアにも力を入れています。アウトドアは天気などの条件が変わりますし、仲間がミスをおかしたり迷子になったり、ハプニングの連続ですが、そういう環境のなかでチームワークを保ち、心身ともに自分の限界に挑戦しなければなりません。座学だけではなく実際に体験しながら学ぶことはとても大事だと考えています。

中道:僕が大事だなと思うことで、日本の教育では足りていないことは、世界を外から見ること、リーダーシップ、課題を解決していくためのクリエイティビティです。

小林:クリエイティビティという言葉は、我々の学校では意識して使っていませんが、多様性ということはとても大切にしています。多様な考え、多様な視点、多様な人と交わるからこそ出てくる発想、そういうことはすごく重視しています。

画一的な価値観の中だと、どうしても異質なものに対する寛容度が下がる傾向にあり、異質なものは隠す、排除するという力が働きがちです。そうすると多様な価値観を持つ人たちがそれぞれ持っているであろうクリエイティビティが表層化しにくい環境になってしまうと思います。

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中道:1クラスの人数の問題や先生の授業以外の仕事の多さなど、学校運営が画一的になるいろいろな理由があるのと思うのですが、今の学校の課題をどのように見ていますか。

小林:もっと教育の選択肢が広がればいいと思っています。少子化で子どもの数は減っているのに不登校の絶対数は増えています。これは、やはり何かギャップがあるからだと思うんです。

一方で今、新しい高専やインターナショナルスクールなど、日本中にさまざまな学校ができはじめています。そこに子どもたちが活路を見出していることはすごく喜ばしいことだと思っていますし、新しい学校や新しい教育が生まれることを促進する制度設計なのか規制緩和なのかができれば、よりいいのではないかと思っています。

中道:仕事もそうですけど、日本は入ったところは最後まで全うしなければいけないという、見えない壁みたいなものがあるような気がします。この学校は合わないからこっちの学校に変わってみようみたいな、そういうチョイスがもっと出てくるといいですよね。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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